2016 Fiscal Year Annual Research Report
酸水素化物を前駆体に用いた新規混合アニオン酸化物の合成と機能開拓
Project/Area Number |
16J05923
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
竹入 史隆 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
Keywords | 複合アニオン酸化物 / トポケミカル反応 / 高圧合成 / 速度論的因子 / 磁気異方性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. チタン系ペロブスカイトにおけるアニオン交換反応 先行研究では、酸水素化物のアンモニア気流処理によって、窒素-水素アニオン交換反応を実現し、(O,H,N)3種複合アニオン化合物を経由した酸窒化物の合成を報告した。本研究では酸窒化物を金属水素化物(CaH2)で還元することで、水素-酸素アニオン交換反応による(O,H,N)3種系の合成を試みた。その結果、わずかな量の窒素でも水素挿入量が劇的に減り、窒素の多い領域では交換反応が進行しないことが明らかとなった。様々な要因を考慮した結果、この現象は窒化物イオンの低い拡散能に由来する、すなわち速度論的因子の影響である可能性が高い。本成果は近日中にJ. Solid State Chem.誌に投稿する予定である。またその仮説、すなわちCaH2還元反応における速度因子の寄与を考慮すれば、アニオンの拡散能の向上がアニオン交換反応の促進をもたらすことが期待できる。そこで前駆体のアニオンサイトに意図的に酸素欠損を導入することで、水素挿入量の増大を狙った。その結果、わずかな酸素欠損の導入で、水素挿入量が大きく増大することがわかった。本成果に関する論文を現在執筆中である。
2. 新規鉄オキシカルコゲナイドBaFe2Se2Oの合成とその複合アニオン配位由来の磁性 高温高圧法を用いることでtrans-FeO2Se4八面体を有する新規層状化合物BaFe2Se2Oの合成に成功した。本物質は低温で反強磁性を示し、そこでは正方格子上で隣り合うスピンどうしが直行した、大変ユニークな磁気構造(2-kモデル)を形成する。我々はtrans-FeO2Se4八面体の結晶場分裂こそが異方的なスピンの起源であり、その規則的な二次元集合が2-k磁気構造を形成することを示した。本成果はRhys. Rev. B誌に掲載された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にあった酸窒化物における構造物性の研究に関しては、種々の測定法を駆使したものの、試料の表面状態や絶縁性の制御が困難なこともあり、期待していた成果は得られなかった。その一方で、複合アニオン酸化物における新規物質・機能開拓は計画以上に進展している。具体的には、酸窒化物および酸素欠損含有酸化物の金属水素化物処理とその詳細な解析によって、酸水素化物の生成過程における速度論的因子の寄与を指摘した。酸水素化物の合成は依然として挑戦的な課題であるが、一連の結果はその反応経路の設計に新たな指針を与えうる重要な成果である。また、高圧合成法を用いることで新規酸カルコゲナイドの合成に成功し、その特異な磁気構造が複合アニオン配位に由来することを示した。ほかにも、これまでにないアニオン組成比を有する酸フッ化物の合成に成功し、現在、配位子としての酸素とフッ素の違いが磁気相互作用に及ぼす影響を調べている。これらを総合的に考慮し、「おおむね順調に進展している」と判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
酸素欠損含有チタン酸化物のCaH2還元反応に関しては、一通りのデータは揃っており、現在論文を執筆中である。必要に応じて追加実験を行う。合成に成功した新規ペロブスカイト型鉄酸フッ化物においては、酸素とフッ素の配位秩序度についての興味深いデータをメスバウア分光実験から得ている。その詳細を明らかにするために、電子線回折実験を行う予定である。それらの結果を論文にまとめ発表する予定である。
|
-
[Journal Article] High Pressure Synthesis of Layered Iron Oxyselenide BaFe2Se2O with Strong Magnetic Anisotropy2016
Author(s)
Fumitaka Takeiri, Yuki Matsumoto, Takafumi Yamamoto, Naoaki Hayashi, Zhi Li, Takami Tohyama, Cedric Tassel, Clemens Ritter, Yasuo Narumi, Masayuki Hagiwara, and Hiroshi Kageyama
-
Journal Title
Phys. Rev. B
Volume: 94
Pages: 184426/1-6
DOI
Peer Reviewed / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
-
[Presentation] 新規ペロブスカイト型鉄酸フッ化物2017
Author(s)
竹入 史隆, 山本 隆文, 細川 三郎,林 直顕, 池田 一貴, 本田 孝志, 大友 季哉, タッセル セドリック, 小林 洋治, 陰山 洋
Organizer
日本化学会 第97回春季年会
Place of Presentation
慶應大学
Year and Date
2017-03-16 – 2017-03-19
-
-
[Presentation] 新規ペロブスカイト型鉄酸フッ化物の合成と物性2016
Author(s)
竹入 史隆, 山本 隆文, 藤田 晃司, 細川 三郎, 小林 洋治, 陰山 洋, 林 直顕, 池田 一貴, 本田 孝志, 大友 季哉
Organizer
日本セラミックス協会 第29回秋季シンポジウム
Place of Presentation
広島大学
Year and Date
2016-09-07 – 2016-09-09
-