2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J05941
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小林 佑 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 遷移金属ダイカルコゲナイド / ヘテロ接合 / 半導体 / 二次元物質 / 結晶成長 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年,遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)を用いた面内ヘテロ接合の作製が可能になり、その低次元性や新たな構造に起因する、新しい物性の発現や低エネルギー消費な電子・発光素子の実現が期待されている。しかし従来の研究では、試料の作製に金属酸化物などの固体原料を使用しており、試料作製時の課題として、原料供給の制御が困難・合成手順が複雑といった点があり、構造の制御が困難であった。そこで、我々は、この課題を解決できる新たな原料を探索し、簡便かつ精密に原料供給を制御できる新奇合成手法の開発と、界面の物性評価を進めてきた。本研究では,新たな原料として、有機金属液体を原料として用い、この原料に適した合成装置を設計・作製した。この合成装置には、遷移金属原料が2種類、カルコゲン原料が2種類取り付けられており、6種のシングルヘテロ接合が作製可能である。現在、このすべての組み合わせの試料を作製可能となり、本手法は多様なヘテロ構造を作製する有用な手段であるといえる。また、これまで作製困難であった2段ヘテロ接合の作製に成功した。また、合成した試料における界面近傍の構造及び局所状態密度を、走査トンネル顕微鏡および走査トンネル分光を用いて評価した。合成した試料における界面近傍の構造及び局所状態密度を、走査トンネル顕微鏡および走査トンネル分光を用いて評価した。MoS2/WS2ヘテロ接合の原子分解能の走査トンネル顕微鏡像より、世界初の原子レベルで急峻かつ直線的な界面が形成されていることが確認できた。また、この試料を用いてバンドダイアグラムを測定した結果、理論計算ではタイプ2であったが、実験的にはタイプ1となっていることを世界に先駆けて明らかにした。この違いは、界面における格子歪による影響だと考えられる。本成果は、二次元ヘテロ接合の光電子デバイス応用に重要な進展をもたらすと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)原子層を用いた面内接合型のヘテロ構造を作製する新奇合成手法の開発に成功した。固体原料を用いた従来の研究で問題となっていた、原料供給の制御が困難、合成手順が複雑といった課題点を解決するために、有機金属液体を原料として用いた。その結果、精密に原料供給を制御できるようになり、ヘテロ接合を鋳型とした幅が20 nmと非常に細いMoS2や、これまでは困難であったダブルヘテロ接合の作製に成功した。さらに、ヘテロ接合の界面における詳細な構造評価を行った結果、原子レベルで急峻かつ直線的な界面を世界で初めて作製できていることが明らかになった。また、この試料を用いることにより、理論計算とは異なるバンドアライメントの観測にも成功しており、今後のさらなる展開が期待できる。そのため、本手法は新たな二次元ナノ構造の作製に有用である期待されており、期待以上の進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに作成した合成装置によってTMDCおよびヘテロ接合の合成は実現できている。今後は、合成温度・ガスの流速・反応時間などの条件検討を行い、ナノリボンや超格子などの精密に構造を制御した結晶の作製を目指す。また、新たな合成装置で合成した試料を用いてデバイスを作製し、電気伝導特性の評価を行う。さらに、現在合成している半導体TMDCのみではなく、金属や超伝導体など多様なTMDCの合成条件を探索し、多様なヘテロ構造の作製を行う。
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Research Products
(8 results)