2016 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトiPS細胞由来高機能性肝組織を基盤としたin vitro肝機能評価系の開発
Project/Area Number |
16J05987
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
厚井 悠太 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | iPS細胞 / 肝臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
当研究室では既にヒトiPS細胞から肝細胞や胆管上皮細胞への二分可能を有する肝前駆細胞を効率的に誘導する手法を開発している。さらに、ヒトiPS細胞から肝類洞内皮細胞、肝星細胞への分化誘導系の樹立にも成功した。そこで本研究では、これまでに樹立したヒトiPS細胞由来肝構成細胞(肝前駆細胞、肝類洞内皮細胞、肝星細胞)を用いてin vitroで機能的な肝組織を構築し、創薬研究や肝病態モデルへの応用を目指した。 ヒトiPS細胞由来肝組織の構築は、in vitroで肝発生を模倣して行った。肝臓の発生は肝類洞内皮細胞や肝星細胞で構成される横中隔間充織に肝前駆細胞が浸潤することで開始する。そこでまず、ヒトiPS細胞由来肝類洞内皮細胞と肝星細胞を用いて三次元構造を有する横中隔間充織をin vitroにて作製した。ヒトiPS細胞由来肝類洞内皮細胞と肝星細胞をコラーゲンゲルに包埋し、三次元培養を行うことで、血管網を有する組織が誘導された。さらに、網羅的遺伝子発現解析の結果から、ヒトiPS細胞由来肝類洞内皮細胞や肝星細胞は、HGFやWntといった肝成熟化に関与する分泌因子やラミニンなどのECMが高発現しており、これらの因子によって肝成熟化が促進される可能性が示唆された。 そこで続いて、これらのヒトiPS細胞由来肝類洞内皮細胞、肝星細胞の培養系に肝前駆細胞を導入し、ヒトiPS細胞由来肝構成細胞の共培養系を樹立した。共培養によって、肝前駆細胞は肝細胞へと分化・成熟化が誘導され、シトクロムP450酵素群等の発現がヒト初代培養肝細胞と比較可能なレベルまで増強された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトiPS細胞由来肝構成細胞(肝前駆細胞、肝類洞内皮細胞、肝星細胞)を用いてin vitroにてヒトiPS細胞由来肝組織の誘導を試みた。誘導したヒトiPS細胞由来肝組織はヒト初代培養肝細胞と近い機能を獲得しており、今後、肝病態モデルや創薬研究への応用が期待できる技術となった。研究はおおむね期待通り進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
ヒトiPS細胞由来肝細胞は生体の肝細胞と比較して著しく未熟であることが知られている。生体の肝細胞と遜色無い機能的なヒトiPS細胞由来肝細胞を樹立するためには、生体の肝細胞の周囲に存在し、肝細胞の分化・機能維持に大きく寄与する肝類洞内皮細胞や肝星細胞を肝細胞誘導系に導入することが必須であると考えられる。 そこで、ヒトiPS細胞由来肝構成細胞(肝前駆細胞、肝類洞内皮細胞、肝星細胞)を用いてin vitroにてヒトiPS細胞由来肝組織の誘導を試みた。ヒトiPS細胞由来肝組織は、ヒト初代培養肝細胞と比較可能なレベルのシトクロムP450酵素群の発現が認められた。 今後は、誘導したiPS細胞由来肝組織の各細胞の局在を免疫組織化学により詳細に解析し、生体の肝組織と構造を比較する。さらに、誘導されたヒトiPS細胞由来肝細胞について、アルブミン合成能、尿素合成能、薬物代謝酵素活性等を指標に性質を評価する。また、ヒトiPS細胞由来肝組織をin vitroでの肝病態モデルへ応用するために、肝障害物質を培養系に添加し、各肝構成細胞の挙動を解析する。
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Research Products
(1 results)