2016 Fiscal Year Annual Research Report
有機-無機ハイブリット型スピン中心の開発とスピン集積ナノマテリアルの構築
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16J05998
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
高橋 佑典 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 安定有機ラジカル / 分子磁性 / 構造磁性相関 / スピン整列 / ニトロキシド / フェルダジル / トリアジニル / 基底多重項分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
磁気転移温度の高い分子磁性体を開発する上で、近接スピン数の増大およびスピン量子数の増加を同時に達成する必要がある。本研究では、スピン中心として複数のラジカル骨格を含む配位子と常磁性金属に注目し、両者を磁気的に相互作用させた常磁性金属錯体を合成し、近接スピン数が大きい集積体の構築することを目指している。具体的には、ラジカル種として配位能を有するニトロキシドラジカルを使用することとした。平成28年度は、化学的安定性を維持しながら単分子あたりのスピン量子数の増加させることを目標として、基底三重項状態を示すジラジカル配位子の設計とその合成、磁気物性評価を行った。 (1)3位にフェニル基またはtert-ブチル基を有するベンゾトリアジニルラジカルに対し、g辺にピロリンニトロキシドを縮環したヘテロジラジカル誘導体の合成研究ならびに構造―磁性相関を議論した。3位官能基の影響により結晶中の分子配列は変化したものの、いずれの誘導体でも強い分子内反強磁性的相互作用を示し、局在型ニトロキシドをスピン中心として用いたジラジカルにおける強い分子内の磁気相互作用を初めて観測した。これは、非共役骨格における分子内での空間および結合を介した磁気相互作用に起因するものであり、不対電子の存在する分子軌道同士の相互作用およびスピン密度分布により説明されることを明らかにした。 (2)(1)で得られた知見をもとに、ピロリンニトロキシドの3位にニトロニルニトロキシド(NN)およびジイソプロピルフェルダジル(VZ)を導入した誘導体の合成研究ならびに構造―磁性相関を議論した。VZを導入した誘導体はイソプロピル基の立体効果によりスピン中心の接近が抑制でき、固体状態で分子内強磁性的相互作用の存在を明らかにした。また、トルエン凍結溶媒中のESRスペクトル測定により、いずれの誘導体も基底三重項分子であることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度においては、局在型ラジカルを用いて、化学的安定性の高い基底三重項ジラジカルを構築することに成功した。この基底三重項分子は配位能を示す部位を有しており、常磁性配位子として活用できる可能性が出てきた。以上より、平成28年度は、おおむね順調に研究が進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
合成した基底三重項ジラジカルを配位子として用いて常磁性金属との錯形成を目指すとともに、ジラジカル誘導体に化学修飾を行い、その磁気特性評価を行う。また、平成28年度に引き続き、平成29年度においても、非共役骨格を介した分子内磁気相互作用の評価に関しても行い、ピロリンニトロキシドに導入するラジカル種の磁気軌道の違いによる分子内磁気相互作用への影響を検討していく。
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Research Products
(12 results)