2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16J06151
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
濱田 雄太 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 特別研究員(SPD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 量子重力 / ニュートリノ / soft theorem / アクシオン |
Outline of Annual Research Achievements |
超弦理論の低エネルギー有効理論として, どのようなクラスの模型が構築可能で, どのようなクラスの模型が構築不可能であるかを同定する研究が盛んである。重力がU(1) gauge群の力よりも弱いとするWeak gravity conjectureが提案されている。conjectureの帰結として, いくつかの仮定のもとに, 超弦理論のランドスケープの中で安定な超対称性を持たないAdS真空は存在しないことが分かる。私は素粒子標準模型がこのconjectureと矛盾するかどうかを詳しく調べた。 重力とU(1)理論の赤外構造に注目が集まっている。soft theorem, 漸近対称性, メモリー効果の間の関係が重力とU(1)理論だけでなく, カイラル対称性が自発的に破れたパイオンの理論にも存在することを示した。特に, 新しくパイオンのメモリー効果を提案した。さらに、無限遠でgauge parameterがdampしないlarge gauge transformationとsoft theoremが対応していることを示した。具体的には, large gauge transformationのWard-Takahashi恒等式としてsoft theoremが得られることを示した。 scalar暗黒物質を仮定し, ヒッグスインフレーションが起こると仮定した時に, テンソルゆらぎの値に対する下限値を求めた。暗黒物質の直接探索実験とtensorゆらぎ観測実験を合わせて, 我々の模型を検証することができる。 アクシオンと中性子星の衝突がfast radio burstの起源となっている可能性、将来のradio wave観測器でのアクシオンの検証可能性を検討した。結果, fast radio burstの起源となるためには信号が弱すぎること, しかし, 将来の観測で検証できる可能性があることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度はプランクスケールの物理と低エネルギー物理との関係性について包 括的に調べ上げた。特に、論文として発表した成果(の一部)は以下の通りである。 我々の世界を記述する素粒子標準模型がこのconjectureと矛盾するかどうかを詳しく調べ た。結果、準安定なAdS真空は存在するものの、安定なものは存在せず、標準模型はWeak gravity conjectureとは矛盾しないことが分かった。一方で、Multiple point principleを適用す るとニュートリノの質量パラメータと質量タイプを予言することができることを示した。 soft theorem, 漸近対称性, メモリー効果の間の関係が重力とU(1)理論だけでなく, カイラル 対称性が自発的に破れたパイオンの理論にも存在することを示した。特に、新しくパイオン のメモリー効果を提案した。対応する対称性はアクシオンのダイポール成分の各々の角度で の保存チャージで生成される対称性である。 無限遠でgauge parameterがdampしないlarge gauge transformationとsoft theoremがsoft 運動量のall orderで対応していることを示した。具体的には、large gauge transformationの Ward-Takahashi恒等式としてsoft theoremが得られることを示した。 以上のように``LHCの結果から探るプランクスケールの物理”という研究課題に基づき、高エネルギーの物理と低エネルギーの物理の関係に様々な角度から迫ることができたと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き重力理論と素粒子物理との関係を調べる予定である。 具体的にはde Sitter時空の構成とswampland予想の関係を調べる。近年、超弦理論でのKKLTによるde Sitter真空の構成がanti-braneのバックリアクションまで考えるとうまくいかないことが指摘されている。超弦理論がde Sitter真空を持つかどうかは現在の宇宙の加速膨張を説明できるか、あるいは宇宙の状態方程式が宇宙項によるものとは違うことを予言するかの重要な問題であり、さらなる理解が必要である。 アクシオンによる非自明な古典解の安定性を調べる。特に球対称でない場合はあまり調べられておらず、準安定な解を持つかどうかは重要な問題である、もし、安定な解を持つ場合は重力波を放出する可能性があり、将来観測とも関わってき得る。 インフレーション宇宙におけるsoft theoremを調べる。昨年、我々が発見したフラット時空でのsoft theoremを膨張宇宙に適用すれば新たなsoft theoremが導出できる可能性が有る。 宇宙の再加熱期におけるバリオン数生成のシナリオの詳細を調べる。生成されるバリオン数を密度行列を用いた計算方法により精密に計算し、現在のバリオン数を説明するためのパラメータ領域を同定する。ニュートリノ振動やニュートリノレスダブルベータ崩壊といった実験との関係性も議論する。
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