2016 Fiscal Year Annual Research Report
Study of ion-ion plasma and plasma meniscus formation in the hydrogen negative ion source
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16J06182
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
西岡 宗 慶應義塾大学, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | イオン性プラズマ / ビームハロ / 水素負イオン / 負イオン源 / ビーム |
Outline of Annual Research Achievements |
水素負イオン源は、負イオンビームの形成を目的とした装置であり、現在は医療、素粒子物理、核融合、半導体製作装置の様々な領域で応用、利用されている。本装置の開発課題として、負イオンビームの大電流化かつ収束性の改善が挙げられる。先行研究では、ビーム収束性がビーム引き出し孔近傍で形成されるイオン性プラズマ層(水素正イオンと水素負イオンのみで構成される特殊なプラズマ層。実験でその存在は報告されている。)の形成に依存すること、またイオン性プラズマ層の形成を制御することでビーム収束性改善にむけた設計指針が提案できる可能性が示唆された。しかしながら、イオン性プラズマ層の形成機構、制御手法は十分理解されていない。 本研究では、負イオン源ビーム引き出し孔近傍に関する3次元数値シミュレーションモデルを構築し、イオン性プラズマ層の形成機構の解明、さらに制御手法を考案することでビーム収束性改善にむけた指標の提案を目的とした。本年度は、イオン性プラズマ層の形成がイオン源内部のフィルター磁場に沿った電子損失量によって決定すること、さらに、この電子損失量を制御することでイオン性プラズマ層の形成、さらにビーム収束性が制御できることを構築されたシミュレーションモデルによって示した。また、自身の数値シミュレーションモデルをドイツ・マックスプランク研究所で開発されたBATMAN負イオン源に適用、この負イオン源においても上述の電子損失量がイオン性プラズマ層の形成に対して支配的であることを定性的に示した。 最後に、シミュレーションモデルの妥当性検証を目指し、パリ第13大学(フランス)、バリ大学(イタリア)と我々、それぞれで開発された負イオン源ビーム引き出し孔近傍に関する3次元数値シミュレーションモデルのベンチマーク問題を立ち上げ、互いの結果を直接比較した。この比較結果を国際学会、さらに論文にまとめ、発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
負イオン源ビーム引き出し孔近傍における3次元数値計算モデルの構築、さらにイオン性プラズマ層形成機構の解明、制御手法考案によるビーム収束性改善にむけた研究を実施した。より具体低には、数値計算によって、イオン性プラズマ層の形成機構に対して支配的な物理量、さらにイオン性プラズマ層の形成に着目したビーム収束性改善にむけた手法提案を数値シミュレーションから実施した。しかし、ビーム収束性改善手法は実験に未検証である。また、数値シミュレーションで得られたビーム孔近傍における水素負イオン温度が実験結果と一致しない、という問題が残されている。 さらに妥当性検証のために、海外大学とのベンチマークテスト立ち上げ、成果を国際会議、論文として発表を行った。この点については計画通りに順調な進展を上げたと考えられる。 また、欧州原子核研究機構(CERN)に滞在し、Linac4用水素負イオン源ビーム引き出し孔近傍へ自身の数値計算モデルを適用し、実験結果とビーム収束性の直接比較にむけた研究に着手している。この研究から、自身が開発した数値シミュレーションモデルに対する定量的な妥当性検証が可能になることが見込まれる。しかして、この研究は本年度中に完了していない。 以上を総合し、現在までの進捗状況として「おおむね、順調に進展している」を挙げた。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン性プラズマ層の形成機構解明に向けた研究において、水素負イオン温度が数値シミュレーション結果と実験結果で定量的に一致しない問題がのこされた。この問題の解決を目指し、水素負イオン温度の緩和過程の考察、さらにこの緩和過程を数値シミュレーションモデルへ導入し、定量的な妥当性確保に向けた研究を進める。さらに、自身が提案した、イオン性プラズマ形成機構に着目したビーム収束性改善手法を実験装置で実施、検証したいと考えている。 また、構築した数値シミュレーションモデルの妥当性検証を目指し、CERNで開発されているLinac4用水素負イオン源のビーム収束性に関する実験結果との直接比較を進めたいと考えている。
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Research Products
(6 results)