2016 Fiscal Year Annual Research Report
脳キナーゼCdk5の新規基質GRABによる小胞輸送を介した軸索伸長メカニズム
Project/Area Number |
16J06215
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
古澤 孝太郎 首都大学東京, 理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 神経突起伸長 / メンブレン・トラフィック / リン酸化 / GRAB / Rab / Cdk5 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経突起伸長の際、突起において細胞表面積の増大が必然的に伴う。つまり、神経突起が伸長するためには、突起先端部への脂質膜の供給が必須である。これに加えて、接着因子といった膜タンパク質も、突起先端部へ輸送される必要がある。こうした脂質膜の供給や、膜タンパク質の輸送は、全て「メンブレン・トラフィック」を介して行われる。しかし、メンブレン・トラフィックの視点で、神経突起伸長が研究され始めたのは、比較的最近であり、その制御機構の多くは明らかでない。そこで本研究では、メンブレン・トラフィックを介した新たな神経突起伸長メカニズムの解明を目的とした。 申請者はこれまで、Rab8のGEFであり、Rab11の結合タンパク質であるGRABが、脳特異的キナーゼCdk5によってリン酸化されること、さらにこのリン酸化が軸索伸長を制御することを明らかにしていた。そこで本年度は、このリン酸化がGRABの機能に与える影響を解析した。GRABはRab8のGEFである。Cdk5によるGRABのリン酸化部位がGEFドメインの近傍にあることから、このリン酸化はGEF活性を制御することが予想された。そこで、このリン酸化がGRABのGEF活性に与える影響を解析したところ、GRABのリン酸化は、Rab8へのGEF活性を負に制御することが明らかになった。次に、リン酸化GRABの細胞内局在を観察したところ、リン酸化GRABは、Rab11陽性小胞と軸索において顕著に共局在していた。この結果は、リン酸化GRABがRab11陽性小胞と軸索内で共輸送されることを示唆する。実際に、ライブイメージングにより、GRABとRab11陽性小胞は、軸索内で共輸送されることが示された。これらの結果から、Cdk5によるGRABのリン酸化は、Rab8活性や、GRABのRab11陽性小胞へのリクルート制御を介して軸索伸長を制御することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
Cdk5によるGRABのリン酸化が軸索伸長を制御する分子メカニズムを明らかにし、その研究成果が海外学術誌に受理された(J. Neurosci. (2017) 37: 790-806)。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究で、Cdk5によるGRABのリン酸化が、Rab11-Rab8カスケードを担うことが明らかになった。今後は、申請者が見出したこの膜動態経路が、実際に生体内においても役割を果たしているのか検討する。具体的には、子宮内電気穿孔法を用いたマウス胎仔脳への遺伝子導入を行い、神経突起形成や、大脳皮質神経細胞移動における役割を解析する。
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