2016 Fiscal Year Annual Research Report
ネギ類根圏へのフザリウム病抑止性細菌群の集積機構の解明
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16J06445
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
西岡 友樹 岐阜大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 発病抑止土壌作出 / フザリウム病 / ネギ類 / グラム陰性細菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
ネギ類の混植や輪作には,難防除病害であるフザリウム病の防除効果が知られている。申請者はこれまでの研究によって,これらのフザリウム病抑制機構には, ネギ類根圏に優占するグラム陰性細菌群が関与する可能性を見出した。そこで申請者は,ネギ類根圏にグラム陰性細菌群が集積するメカニズムを解明し,土着のグラム陰性細菌群を人為的に制御できるようになれば,新規のフザリウム病防除法となると考えた。しかし,根圏への細菌群の集積機構は解明されていない。そこで本研究では ネギ類根圏へのフザリウム病抑止性細菌群の集積機構の解明をすることを目的とした。 本年度ではまず,ネギ類(ネギ,タマネギおよびニラ)および非ネギ類(キュウリおよびトマト)の根抽出液を獲得し,これら抽出液を添加した土壌のフザリウム病に対する発病抑止性を比較した。その結果,ネギ類の根抽出液を添加した土壌にのみ共通してフザリウム病抑止性が誘導されることがわかった。続いて,ネギの根抽出液を添加した土壌を40、60、80、120℃で加温処理し、フザリウム病に対する発病抑止性を比較したところ,40℃処理区では発病抑止性が認められたが、60℃以上の加熱処理区ではその発病抑止性が失われた。60℃の加温処理でグラム陰性菌および糸状菌,80℃の加温処理でグラム陽性菌が死滅することから、ネギ類の根抽出液添加土壌の発病抑止性はグラム陰性菌および糸状菌に起因するものと考えられた。さらに,ネギの根抽出液添加土壌にはフザリウム病菌の増殖を抑制する効果があることをことが明らかとなった。このフザリウム病菌増殖抑制効果は、抗細菌物質の土壌添加により消失した。以上のことから、ネギ類の根抽出液添加土壌のフザリウム病抑止性は、ネギ類の根抽出液添加により土壌中に集積したグラム陰性菌に起因するものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、ネギ類の根抽出液を土壌に添加することにより、ネギ類を栽培したときと同様のフザリウム病抑止性を再現できるのか、という点を中心に研究を進めた。その結果、1)ネギ根の水抽出液添加により1週間程度で様々な土壌にフザリウム病抑止性を誘導できること、2)その抑止性の原因は土壌への拮抗性グラム陰性細菌の集積であること、などを明らかにした。これら一連の成果は、世界初の発病抑止土壌の人工作出技術の基盤となり得る知見であることから、平成29年3月に特許出願を行った。現在、抑止性誘導の原因化合物の特定に向けた各種解析を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
ネギの根抽出液中の物質のうち、フザリウム病抑止性を誘導する原因化合物を特定する。まず、極性の異なる有機溶媒を用いて、ネギの根抽出液中の物質を分画する。続いて、各画分の土壌への発病抑止性誘導効果を評価し、効果の高い画分中の物質をGC/MSやHPLCで分析する。さらに、同定した原因化合物について発病抑止性誘導効果を評価する。また、原因化合物添加土壌の発病抑制メカニズムを解明するため、原因化合物を添加した土壌に集積するグラム陰性菌を次世代シーケンス解析により特定する。
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Research Products
(7 results)