2017 Fiscal Year Annual Research Report
ネギ類根圏へのフザリウム病抑止性細菌群の集積機構の解明
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16J06445
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
西岡 友樹 岐阜大学, 連合農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | キュウリつる割病菌 / 発病抑止土壌 / ネギ属植物 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28度の研究では、ネギ属植物根の水抽出液を土壌に添加し、1週間以上置くことでキュウリつる病に対する発病抑止性を誘導できること,さらに非ネギ属植物の根の水抽出液の添加では,キュウリつる病に対する発病抑止性は誘導されないこと,を明らかにした。そこで平成29年度は,ネギ属植物根の水抽出液中に特徴的に存在するキュウリつる病抑止性誘導の原因物質を特定することを目的として研究を進めた。具体的には以下の通りである。 (1)ネギ属植物根の水抽出液中に特徴的に存在する物質の同定 ネギ属植物(ネギおよびタマネギ)根の水抽出液と非ネギ属植物(キュウリおよびトマト)根の水抽出液をLCMS/MSにより比較した。その結果,ネギ属植物根の水抽出液のみに多量に存在する6種の物質を同定することに成功した。よって,これら6種の物質をキュウリつる病抑止性を誘導する候補物質として,以下の検定を行なった。 (2)同定した成分物質のフザリウム病抑止誘導効果の検定 同定した6種の物質をそれぞれ土壌に添加し,1週間・25℃で培養した後,各土壌のキュウリつる病抑止性を調べた。その結果,2種の硫黄化合物と1種のリボヌクレオシドにそれぞれフザリウム病抑止誘導の効果があることが判明した。 これらの結果から,ネギ属植物根の水抽出液の特有成分物質(2種の硫黄化合物および1種のリボヌクレオシド)の添加により,ネギ属植物根の水抽出液の添加によって誘導されるキュウリつる病抑止性と同等の効果を持った土壌(人工的なキュウリつる病抑止土壌)を作出できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ネギ属植物根の水抽出液中に特徴的に存在する物質の同定については,6種類の物質を同定することに成功した。また,同定した成分物質のフザリウム病抑止誘導効果の検定については,同定した6種類の物質のうち,3種類の物質にキュウリつる割病抑止誘導効果があることを明らかにした。 本研究で開発した発病抑止土壌の人工作出法は世界初の手法であることから、平成30年3月に特許出願を行った。 以上の理由より,本研究は順調に研究が進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は,ネギ属植物根の水抽出液中に特徴的に存在するキュウリつる病抑止性誘導の原因物質を特定し,発病抑止土壌の人工作出法を開発した。今後は,これらのキュウリつる割病抑止土壌の発病抑止性メカニズムを解明することに重点をおいて研究を行う。つまり,当初予定していたように,物質添加によって土壌にフザリウム病菌拮抗性細菌が集積するかを解析する。また,本実験で開発した発病抑止土壌が汎用性の高い土壌であるかを確認するため,キュウリつる割病以外のフザリウム病に対する抑制効果の検定を行う。
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