2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J06585
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂尾 美帆 東京大学, 大気海洋研究所, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 婚外受精 / 行動時間配分 / 親子鑑定 |
Outline of Annual Research Achievements |
【オオミズナギドリの婚外受精の検出】 採用者は岩手県の船越大島、三貫島、新潟県粟島、島根県高島、山口県宇和島の合計5箇所でサンプリングを行い、各島のつがい外父性を検出する実験を行い、このうち船越大島と粟島ではつがい外父性率が大きく異なることを発見した。今後は国内2つの島のデータも加え、つがい外父性率を比較し、つがい外父性を引き起こす環境要因について考察していく予定である。 【オオミズナギドリの行動時間配分の解析】 小型記録計から得られたデータの解析からオオミズナギドリの行動を採餌、休息、飛翔、島滞在の4つに分類し、分類したそれぞれの行動が、交尾期間のどれくらいの割合を占めているかを算出した。このうち、島滞在時間割合については、すべてのつがいでオスがメスよりも長く、オスはメスの防衛や交尾に長い時間を割いていることが明らかになった。また、つがい外父性が起きたつがいのオスとメスは、起きなかったつがいよりも長い時間島に滞在している傾向にあった。オオミズナギドリのつがい外交尾は巣外で行われ、つがい内交尾は巣内で行われると考えられる(坂尾pers.obs.)ことから、つがい外父性が起きたつがいの個体は、島で巣外にいた時間が長く、つがい外交尾が起きる機会が多かったのではないかと考えられる。この結果をもとに、次年度はオオミズナギドリの巣への出入りを記録する実験系を確立し、島滞在時間と巣内滞在時間とを組み合わせて解析することで、つがい外父性に各個体の帰島行動が及ぼす影響をさらに詳細に評価していく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2014年から2016年にかけて船越大島で繁殖していたオオミズナギドリの親子鑑定を実施し、毎年2~3割程度婚外受精が起きていることを発見した。また、小型記録計を用いた行動解析の手法を確立し、各個体の活動時間の配分を解析した。婚外受精が起きたつがいと起きなかったつがいで島滞在に割いた時間割合を比較した結果、婚外受精が起きたつがいのオス、メス両方が、島に長く滞在する傾向にあることを明らかにし、学会発表を行なった。さらに、交尾期間のオスのオオミズナギドリは、つがい相手と島で出会う確率を高めるために、自身のトリップ長を調整しながら採餌と帰島を繰り返していることを明らかにし、現在国際誌に投稿する準備を行なっている。 また、船越大島以外にも、新潟県粟島、山口県宇和島、島根県高島でのサンプリングも実施し、全国の繁殖地間でつがい外父性率を比較するために十分なサンプルを取得した。現在粟島の親子鑑定を3年分終え、宇和島の個体の親子鑑定を実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの観察結果から、オオミズナギドリの婚外交尾は、巣内ではなく巣外で起きている可能性が高いことがわかっている。初年度は、オオミズナギドリ各個体の島滞在時間を推定し、比較することで、つがい外父性を引き起こす行動を検出することを試みた。しかし、オオミズナギドリは島に滞在していても、必ずしも巣内にいるわけではない。そのため、巣への出入りを詳細に調べ、巣内部で過ごした時間と、巣外で過ごした時間とを分けて考え、婚外交尾への影響を評価する必要がある。これらをふまえ、2016年の調査時に、オオミズナギドリの足に個体識別タグを装着した。2017年の調査では、各巣にタグ番号を読み取って個体の出入り時間を記録するゲート(RFIDシステム)を設置する。これにより、交尾期間のオオミズナギドリが、何時に巣に入り、何時に出て行ったのか、島にいた時間のうち、何割を巣内で過ごしたかという時間配分が明らかになる。このデータを利用して、オオミズナギドリのオスがどれくらいの時間をつがい相手との交尾や防衛に充てていたのかを明らかにしていく。この結果と婚外受精率とを組み合わせることで、オオミズナギドリの帰巣頻度が婚外受精という現象にどのように影響を及ぼしているか評価していく予定である。
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