2017 Fiscal Year Annual Research Report
腫瘍溶解性レオウイルスの蛍光イメージングによる最適な腫瘍治療プロトコールの探索
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16J06655
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
伊賀瀬 雅也 山口大学, 連合獣医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | レオウイルス / 遺伝子組換え |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は、ウイルス治療の最適なプロトコール作りのために、(課題1)レオウイルス T3D株に蛍光(発光)レポーター遺伝子を導入すること、および(課題2)生体内イメージングを行うための材料の準備を行った。 まず、(課題1)については、残念ながらT3D株にレポーター遺伝子を導入することは難しく、T1L株を使用する必要があることが明らかとなった。そのため、既に作製可能なnano-luc遺伝子導入T1L株を用いて生体内イメージングを実施することに方針を変更した。 最初に、T1L株が治療用レオウイルス T3D株と同様に犬の腫瘍細胞株に対して抗腫瘍効果を示すかを検討した。その結果、T1L株は、組織球肉腫、メラノーマ、乳腺腫瘍細胞株に対して、T3D株と同程度の細胞傷害性を示すことが分かった。また、T3D株に対して感受性の低かったいくつかの細胞株に対して、T1L株が高い感受性を示すことも明らかとなった。これらの結果から、T3D株で遺伝子組換えウイルスを作製することができない問題点を、T1L株で補完することができると考えている。 次に(課題2)として、マウスを用いた生体内イメージングを実施する準備を行った。まず、遺伝子組換えウイルスを大量に精製する必要があるため、効率的なウイルス回収法の確立が必須であった。本研究員らはこれまでに、ATM阻害剤が腫瘍細胞内でレオウイルスの増殖を促進することを発見した(特許出願中)。その原理を、nano-luc遺伝子導入T1L株の作製時に応用できないか検討した。その結果、ATM阻害剤は、レオウイルスを増殖させる際に用いるL929細胞においても同様の作用を持つことが分かった。遺伝子組換えで作製したレオウイルスの問題点として、一度に効率的に大量精製できないことが挙げられるが、本成果が、その課題の解決の糸口になることが期待できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究員の研究への取り組みは、誠実かつ意欲的であり、おおむね予定通りの成果を残している。当初の予定通りであれば、治療用レオウイルスT3D株に対して、蛍光レポーター遺伝子を導入するはずであったが、その作製が困難であった。そこで次の策として、レオウイルス T1L株を用いる代替案を検討した。その結果、T1L株についても犬の腫瘍細胞に対して同程度以上の抗腫瘍効果を示すことが分かり、この方法を用いることが可能であることを示した。また、ウイルス精製時の課題である、大量のウイルスの作製法については、ウイルス収量をあげる方法を樹立し、対応している。したがって、今後は、実際に生体を用いた実験を行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、これまでの研究成果に基づき、 (課題1)nano-luc遺伝子導入レオウイルス T1L株の大量精製と、その品質の確認を早急に行う必要がある。外来遺伝子を導入したウイルスについては、継代することで目的遺伝子が抜け落ちてしまう問題点がある。そのため、昨年度樹立したウイルス収集方法を用いて、一度に大量にウイルスを精製することで、レポーター遺伝子の欠失を改善可能だと判断している。 また、(課題2)実際の生体(マウス)を用いて、ウイルスの体内動態、投与経路による腫瘍への移行性の違いを蛍光と発光を用いた2重イメージングで明らかにする。蛍光レポーター遺伝子導入腫瘍細胞株は、皮下移植モデルだけでなく、肺転移モデルを作製し、より臨床現場に近いモデルで検討していく。これらの検討により、臨床的なレオウイルス治療で用いることのできる最適な治療プロトコールを作製する。
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