2016 Fiscal Year Annual Research Report
スピン流による人工反強磁性体の磁化ダイナミクスの制御
Project/Area Number |
16J06683
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 健勝 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
Keywords | スピントロニクス / 強磁性 / スピンホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
反強磁性材料は、高い周波数のために高周波スピントロニクス材料として期待されている。我々は、反強磁性磁化ダイナミクスをスピン流で制御すべく、反強磁性結合した磁化にスピン流が与える影響を研究している。我々はこれまでに、人工反強磁性体であるFe(2)/Co(1)/[Cu(1)/Co(1)]10/Pt(4)多層膜(単位nm) を用いてスピントルク強磁性共鳴による実験を行い、隣り合う磁性層の歳差運動の位相差がゼロの音響モードと位相差がπの光学モードの2つのモードの内、光学モードの共鳴周波数が直流電流の印加によって大きく変化することを報告した。Pt層を流れる電流から誘起されるスピン流が人工反強磁性体に注入されることで、この共鳴周波数変化が生じると我々は当初に考えていた。しかし、Pt層からのスピン流だけをスピン注入源として想定した場合、観測した共鳴周波数の変化量が計算結果と一致しなかった。計算結果との違いの原因として、人工反強磁性体を構成しているCoのスピンホール効果によるスピン注入が考えられる。そこで、今年度の研究ではCoのスピンホール効果を定量的に見積もることを見据え、Coよりも測定の容易な強磁性体であるNiFe合金のスピンホール効果の大きさを定量的に推定する実験を行った。その結果、NiFe合金のスピンホール効果の大きさを定量的に見積もることに成功した。さらに、NiFeの磁化に起因するスピン流注入現象を確認することに成功した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、当初の予定伊通りCoよりも測定が容易な強磁性体のであるNiFe合金のスピンホール効果の大きさの推定を行うことに成功した。さらに、NiFeの磁化に起因するスピン流注入現象を確認することに成功した。 この実験結果は、スピントロニクス分野における研究対象を大きく広げる可能性を持つとともに、基礎物理的に非常に有益な知見を与えうる。したがって、本年度の研究目的を、当初の計画以上に進展させることに成功したといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成29年度の方針は、以下の通りである。まず、Coのスピンホール効果の推定を行うとともに、NiFeの場合と同様に磁化に起因するスピン流注入現象を確認すること目指して実験を行う。次に、反強磁性結合したCo/Cu/Co三層膜(人工反強磁性体)を作製し、Coからのスピン注入のみでの磁化ダイナミクスの制御を目指して実験を行う。
|
Research Products
(1 results)