2017 Fiscal Year Annual Research Report
光散乱現象を用いた音圧計測法に基づいた非接触騒音計測
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16J06772
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
石川 憲治 早稲田大学, 理工学術院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 音響光学効果 / 光学的音響計測 / 高速度カメラ / 偏光高速度干渉計 / 並列位相シフト干渉法 / 空力音響 / アコースティックイメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、偏光干渉計および偏光高速度カメラを用いた2次元音場の瞬時・定量イメージング計測法を用いて種々の音場・騒音源の可視化計測を行い、手法の有効性を検証した。従来より行われてきたマイクロホンによる音場観測では、マイクロホンが接触型センサであるという制約上、音源の極近傍や空気流れ内部を伝搬する音波を直接観測することが非常に困難であった。それに対して本計測法は、測定領域に存在するのは測定光のみであり、したがって非接触な音場観測が可能である。本年度は特に透明筐体内部音場および流れ場中の音場の計測に取り組んだ。 筐体内部における音場を理解することは、ダクト騒音やキャビティ音などの低減のために重要である。光によって筐体内部の計測を実現するためには、筐体を光が透過することおよび干渉縞が発生することが必要である。そこで複数の透明材料について検討実験を行い、特定の製法で作られた一部のアクリル板および光学ガラスが上記の条件を満たし、筐体として使用可能であることが分かった。アクリル板を用いてダクトおよびスピーカボックスを作成し内部音場の計測を行い、筐体内部を伝搬する音および筐体内部での定在波の観測に成功した。次に流れ場中の音波伝搬の計測を行った。音源として共鳴構造をもつ笛を用いた。笛に空気よりも分子量の大きいガスを流入し、スリット部分より放射される音と流れの同時測定を試みた。計測データに時間領域フィルタリングを施すことによって、音と流れを同時に捉えることに成功した。これらの研究によって様々な環境下における本計測手法の有効性が実証され、実際の騒音源および複雑な音場における応用可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度は、偏光高速度干渉計を用いて実音場の計測を行い、筐体内部音場の測定および音と流れの同時可視化を行った。筐体内部においてはマイクロホンアレイの使用やマイクロホンのスキャニングが難しく、内部の音場を空間的な分布を緻密に捉えるのは困難であった。当該課題の研究によって筐体内部音場のサブミリメートルの空間分解能での可視化が実現された。この研究成果は、騒音振動分野の手法な研究課題のひとつであるダクト内音波伝搬に対して、新しい実験的アプローチとなり得るものであり、その意義は大きいといえる。音と流れの同時可視化では、空気と分子量の異なる気体を流入し、時間領域フィルタリングによって低周波成分の低減と音波の強調を行うことによって、音と流れの同時観測を実現した。これによって空力騒音の発生箇所である流れ内部の音波伝搬を捉えることが可能となり、空力騒音分野での応用が期待される。本研究成果をまとめた論文は、Optics Lettersから出版され、さらにSpotlight on Opticsにも選ばれるなど、非常に注目されている。 このように本課題で提案した音場計測手法について、騒音分野でも重要度の高い2分野での有用性をすでに実証するしている。また、騒音分野以外でも音響トランスデューサの評価・解析や楽器放射音の計測などへの応用もすでに進めている。以上の理由から、本研究課題は当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、偏光干渉計および偏光高速度カメラを用いた2次元音場観測装置を用いて、種々の騒音源の観測および解析手法の研究を進める。これまでの計測対象音源は調和的あるいは狭帯域音源が中心であった。今後はより広い周波数帯域を有する音源について計測を行う。特に干渉計による光路上積分の影響が広帯域音源に関してどのように現れるかを評価し、広範な音源に適用可能な計測方法・解析方法の研究を進める。 その後、特に計測結果の解析・評価手法の検討および従来法による計測結果との比較を重点的に行い、本計測手法によって得られたデータの利活用の方法の具体化を進める。本計測法によって得られるサブミリメートルの空間分解能をもつ音場情報は従来では取得が非常に困難であったため、データの解析方法・活用方法についても十分に考慮されていない。観測データは音場に関する膨大な情報を含んでいるが、得られた結果を動画として観測することが、必要とする情報を得るための最適な方法であるとは必ずしも言えない。例えば、広帯域かつ複雑な形状を有する騒音源に対しては、音場の時間変化を観察するよりも、周波数帯域ごとの音源強度マップの作成を行う方が明確に騒音源の特定ができると想定できる。また、空力騒音分野においては、当該分野で行われてきた数値シミュレーションや流れ場の測定の結果等との比較を通して、本計測手法で得られる知見を強化し、より汎用的かつ実用的な計測が実現できると考えられる。今後はそのような解析・表示手法の研究を進め、本計測手法の有効性・応用可能性を拡大を推進する。
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