2016 Fiscal Year Annual Research Report
高次クロマチン形成を介した遺伝子発現制御機構の解明
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16J06850
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
加藤 大貴 早稲田大学, 先進理工学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | クロマチン / X線結晶構造解析 / ヒストン / ヌクレオソーム |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物の遺伝情報の担体であるDNAは、高次に折りたたまれたクロマチン構造を形成することで、細胞核内に収納される。これまでに、クロマチンの基盤構造であるヌクレオソームに関しては多くの知見が得られているが、高次のクロマチン構造に関して、未だ不明な点が多い。本研究は、遺伝子発現に重要な影響を与える高次クロマチンの構造およびその形成機構を構造生物学、生化学的手法を用いて解明することを目的としている。 本年度までに、高次クロマチンの基本単位であるリンカーヒストンH1-ヌクレオソーム複合体(クロマトソーム)の結晶化を行い、大型放射光施設であるフォトンファクトリーを用いたX線回折実験によって、4.5 ÅのX線回折データを取得することに成功した。 また、クロマチンリモデリングの中間体として形成されることが考えられる、2つのヌクレオソームが連結した複合体(オーバーラッピングダイヌクレオソーム)のX線結晶構造解析を行った。オーバーラッピングダイヌクレオソームを大量に調製する系を確立し、その結晶を得ることに成功した。得られた良質の結晶を用いて、大型放射光施設であるSPring-8を用いたX線回折実験を行い、3.14 Åの分解能でオーバーラッピングダイヌクレオソームの立体構造を決定した。この構造から、2つのヌクレオソームが衝突し、H2A、H2Bという2つのヒストンが欠落すること、2つのヌクレオソーム間で新たな相互作用が生じていることなどを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は、高次クロマチンの構造と形成機構を明らかにすることで、クロマチンと遺伝子発現機構の関係を明らかにすることを目的に研究を行っている。本年度においては、高次クロマチンの基盤構造であるクロマトソームを高純度かつ高濃度での調製し、良質な結晶を得ること、得られた結晶を用いて良質の回折データを得ることを計画していた。本年度の解析によって、クロマトソームの良質の結晶を得ることに成功し、4.5 ÅのX線回折データを取得することに成功した。このことから、当初の計画を十分に遂行したと判断した。また、クロマチンリモデリングの中間体と考えられるオーバーラッピングダイヌクレオソームの結晶化に成功し、大型放射光施設であるSPring-8を用いたX線回折実験によって、その立体構造を世界で初めて決定することに成功した。この成果は、遺伝子発現にともなって変化する高次クロマチンの構造を明らかにする上で非常に重要な知見を与えるものである。これらのことから、本年度の研究は、当初の計画以上に進展していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究において、高次クロマチンの基盤構造であるクロマトソームの良質の結晶を得ること、4.5 ÅのX線回折データを取得することに成功した。次年度は、この回折データをもとに、構造解析を行い、クロマトソームの立体構造を明らかにすることを目指す。また、本年度は、クロマチンリモデリングの中間体と考えられるオーバーラッピングダイヌクレオソームの立体構造の解明に成功した。さらに、オーバーラッピングダイヌクレオソームにヒストンH1が結合することが明らかになり、クロマトソームの新たな構造体の基盤であることが分かった。これらの解析の結果、ヒストンH3の56番目のリジン残基、および80番目のチロシン残基が、オーバーラッピングダイヌクレオソームの構造形成に重要であることが考えられた。H3の56番目のリジンは、先行研究によって、アセチル化の翻訳後修飾を受けることが報告されている。次年度は、H3の56番目のアセチル化がオーバーラッピングダイヌクレオソームの形成に与える影響を解析することで、翻訳後修飾によるオーバーラッピングダイヌクレオソームの構造制御機構を明らかにする。そして、オーバーラッピングダイヌクレオソームを基盤とした新たなクロマトソームの高次構造研究の基盤情報を得る。またクロマチンの形成は、ヒストンシャペロンと呼ばれるタンパク質群によって制御されることが知られる。次年度は、ヒストンシャペロンに依存した高次クロマチンの制御機構を明らかにするため、ヒストンシャペロン-ヒストン複合体の生化学、構造生物学的な解析を目指す。
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Research Products
(4 results)
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[Journal Article] Crystal structure of the overlapping dinucleosome composed of hexasome and octasome2017
Author(s)
Daiki Kato, Akihisa Osakabe, Yasuhiro Arimura, Yuka Mizukami, Naoki Horikoshi, Kazumi Saikusa, Satoko Akashi, Yoshifumi Nishimura, Sam-Yong Park, Jumpei Nogami, Kazumitsu Maehara, Yasuyuki Ohkawa, Atsushi Matsumoto, Hidetoshi Kono, Rintaro Inoue, Masaaki Sugiyama, Hitoshi Kurumizaka
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Journal Title
Science
Volume: 356
Pages: 205-208
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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[Presentation] Structural analysis of unusual form of nucleosome2016
Author(s)
Daiki Kato, Akihisa Osakabe, Fumiya Adachi, Yuka Mizukami, Yasuhiro Arimura, Kazumi Saikusa, Satoko Akashi, Yoshifumi Nishimura, Sam-Yong Park, Atsushi Matsumoto, Hidetoshi Kono, Rintaro Inoue, Masaaki Sugiyama,Hitoshi Kurumizaka
Organizer
Colorado Chromatin Meeting 2016
Place of Presentation
コロラド
Year and Date
2016-08-08
Int'l Joint Research
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