2016 Fiscal Year Annual Research Report
先端的イメージング技法を用いた新たな神経伝達様式の解明
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16J06859
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
佐藤 慧太 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | オキシトシン / 脊髄 / 電子顕微鏡 / 神経内分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでニューロン間の情報伝達の「場」は、軸索終末のシナプス構造に限局し、シナプスが神経ネットワークを形成すると考えられてきた。しかしながら、研究代表者の所属する研究室では、ラット間脳から腰髄に投射するオキシトシンニューロン軸索においても、オキシトシンが傍分泌的に放出される現象(volume transmission)を見出しつつあり、軸索においてもペプチド性の傍分泌的な神経伝達メカニズムが存在する可能性が示唆される。本研究では、オキシトシンのシナプス構造以外からの開口放出に着目し、免疫電顕と蛍光イメージングモデルを用いて、新規の神経伝達メカニズムであるvolume transmissionを明らかにすることを目的とした。 本年度では、免疫組織化学法を応用した超微形態構造解析法を駆使し、シナプスに限局しない新たなシグナル情報伝達メカニズムであるvolume transmissionを、超微形態レベルで捉えることを試みた。まず、ラット脊髄腰部の急性スライスを作製し、これを人工脳脊髄液中で馴化させた後、高カリウム刺激による開口放出の誘発を行い、連続ブロック表面走査型電子顕微鏡を用いて三次元・網羅的に超微形態を観察した。結果、脊髄に投射するオキシトシンニューロンの軸索を、三次元的に可視化することに成功し、オキシトシンが軸索終末だけでなく、軸索中途の膨大部が数珠状に連なった構造(バリコシティー構造)においても開口放出されることが示唆された。 さらに、同様の手法により開口放出を誘発したラット脊髄腰部を用い、免疫組織化学法を応用した透過型電子顕微鏡による観察を試みた。その結果、オキシトシンニューロン軸索バリコシティー構造において、シナプス構造に限局することなくオキシトシンが開口放出される、新規の神経伝達メカニズム「volume transmission」が存在することが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究により、脊髄に投射するオキシトシンニューロンにおいて、電子顕微鏡を用いた超微形態解析により、シナプス構造に限局しない新規の神経伝達メカニズム「volume transmission」の存在が示唆された。また、オキシトシンの蛍光イメージングモデルの確立もされつつある。以上の理由から、研究はおおむね順調に進展しているものと自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度明らかにした、新規の神経伝達メカニズム「volume transmission」の分子機構を明らかにする。神経ペプチドであるオキシトシンに着目し、蛍光タンパク質を指標としたイメージング解析により、分子機構の解明を試みる。この解析では、神経ペプチドオキシトシンの細胞内動態を可視化するモデルとして、オキシトシンニューロンにおいて赤色蛍光タンパク質(mRFP)を発現するOXT-mRFPトランスジェニック(Tg)ラットを用いる。まず、本Tgラットにおける、mRFPの細胞内動態を免疫電子顕微鏡により解析する。さらに、オキシトシンの血中量が増加することが知られる、出産・授乳中の母ラットの血中mRFPを、ウェスタンブロット法を用いて生化学的に解析する。これらの解析により、本TgラットにおけるオキシトシンとmRFPの生体内動態を解析し、オキシトシンの生体内動態を可視化するモデルの確立を試みる。
さらに、OXT-mRFP Tgラットの脊髄急性スライスに高カリウム刺激を行い、開口放出を多光子顕微鏡下で蛍光イメージング観察する。加えて、灌流する人工脳脊髄液に各種薬物を添加することによる開口放出の変化を蛍光イメージング観察し、開口放出に関わる分子機構の解明を試みる。
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