2016 Fiscal Year Annual Research Report
動的ペチェック過程のメカニズム解明によるリコネクション高速化問題の解決
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16J06873
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
柴山 拓也 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | プラズマ物理 / 太陽物理 / 太陽フレア / 磁気リコネクション / プラズモイド |
Outline of Annual Research Achievements |
Shibayama et al.(2015)で現れるペチェック型の構造は激しく運動するプラズモイド(X=320あたりの丸い構造)に付随することが多かったためにプラズモイドが運動することが重要であると考えていた。しかし、本年度の研究によってプラズモイドを停止させた状態でもペチェック型の構造が発展することが明らかになった。結果を詳しく解析するとペチェック型構造が形成する際に速度の零点である停留点と磁場の零点であるX点の位置にずれが生じ、これによりX点の振る舞いが制限されてペチェック型が実現していることがわかった。プラズマに働く力を詳細に解析することでX点では強い負の圧力勾配力が働いていることがわかった。また、磁場の変化を記述する誘導方程式に注目することで、X点が停留点から離れていく直接的原因の特定にも至っている。この結果については28年度に国際学会の招待講演でも発表し、現在論文にまとめるため準備を進めている。 また、昨年度は本年度以降の研究のためにコード開発と資源獲得を行った。28年度の成果により3次元シミュレーションコードの作成は完了し、最適化も概ね終了した。京コンピュータでのノード実行効率は14%を超えており、並列化率も99.999%を超えているため博士課程での3次元数値研究計画遂行で目標とする並列度で5000x2000x2000グリッド程度を用いた大規模数値計算が可能である。このコードを用いて29年度の「京コンピュータ若手人材育成課題」に応募し、採択された。これにより29年度に計画していた3次元数値研究は十分遂行可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
先進的な数値シミュレーションで磁気リコネクションの新しい高速化過程を世界に先駆けて見出すと共に、その高速化メカニズムの解明に向けて独自の研究を展開している。また、京コンピュータを駆使して、これまでにない精密なシミュレーション研究を発展させ、太陽コロナのような非常に電気抵抗の小さいプラズマでの高速リコネクションの統一的理解に迫っている。すでに国際学会での招待講演に選ばれるとともに、プリンストン大学プラズマ物理研究所など各国の研究者からも大きな注目を集めている。大学院生としてほとんど例がない京コンピュータの若手人材育成課題に自ら申請し、採択されたことは高い評価の現れでもある。それ故、期待以上の研究進展があったと評価できる
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Strategy for Future Research Activity |
本課題の研究は2次元モデル、3次元モデル、観測的研究の3つに大きく分けることができるがそれぞれについて順調に研究が進行している。2次元研究ではさらなる解析を進めるとともに論文の執筆を行う。3次元研究では今年度獲得した京コンピュータの計算資源を利用して今まで到達できなかったパラメータ領域の研究が可能となる。これにより今まで乖離していた2次元モデルと3次元モデルを結合した磁気リコネクション過程の理解に到達することを目指す。観測的研究では日本のHinode衛星の運用にすでに関わっており、本年度から極端紫外線分光器であるEISのデータを用いた研究に着手すべくコミュニケーションを進めている。 また、MHDプラズモイドリコネクション理論で世界をリードしているプリンストン大学のPPPLの研究者とも交流を進めている。今年度は数週間プリンストン大学に滞在し、共同研究を進める予定である。
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