2017 Fiscal Year Annual Research Report
電気自動車の走行中ワイヤレス給電における状態推定に基づく電力制御の構築
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16J06942
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
畑 勝裕 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ワイヤレス電力伝送 / 電気自動車 / 走行中給電 / 状態推定 / 効率最大化 / 電力制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は電気自動車の走行中ワイヤレス給電における制御設計とシステム構築を主な目的として,システム構成法および設計指針の提案,送電開始時におけるソフトスタート動作の実現,実車走行試験に向けたインフラ構築に取り組んだ。これらの研究成果は国内外の学会で発表を行い,学術誌に論文投稿している。さらに,実車走行試験に向けたインフラ構築を行い,次年度以降における実験環境を整備した。 1) システム構成法および設計指針の提案:送電側および受電側の電圧比を用いて特性解析を行う新たな設計手法を提案し,電力伝送効率を最大化できる動作領域および安定した電力供給を優先すべき動作領域のそれぞれに対して新たな関係式を導出した。また,ワイヤレス給電の送電側と受電側における電圧仕様からシステムの構成法を4つに分類し,負荷の電力要求に応じて最大効率動作,電力優先動作,再設計の3つの設計指針を与えた。本成果は電気学会論文誌D(Vol.138, No. 4)に掲載された。 2) 送電開始時におけるソフトスタート動作の実現:電気自動車の走行中ワイヤレス給電において重要となる過渡特性の解析およびその制御応用について取り組んだ。本研究ではワイヤレス給電システムを各要素に分けて表現したブロック線図から伝達関数モデルを導出し,過渡解析に基づく送電側インバータのソフトスタート動作を提案した。本成果は国内研究会で口頭発表を行ったほか,大規模な国際会議にも採択されている。 3) 実車走行試験に向けたインフラ構築:次年度以降の実車走行試験に向けたインフラ構築を行った。電気自動車が走行する舗装路面の整備だけでなく電源設備の構成についても検討し,数kWクラスの大電力実験が可能な環境を整えた。これらの電源設備に送電側インバータおよび送電器を接続し,受電器を搭載した実験車両が送電器を設置した走行中給電レーン上を通過できる実験環境を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
これまでに受電側情報に基づく複数パラメータの同時推定法,動特性を考慮した新たな制御設計手法など,多くの研究課題に着手し,これらの成果発表を行った。当初の研究計画においては複数受電器における制御設計を課題として挙げたが,本研究の進捗によって走行中ワイヤレス給電システムにおいても送受電器が1対1となる構成とすべき知見が得られたため,本年度はより高度な制御を実現する手法についても検討した。さらに,実車走行試験に向けた環境構築まで順調に進めており,当初の計画以上の進捗が得られている。ここでは本年度得られた成果について,以下に簡潔に記述する。 1) システム構成法および設計指針の提案:従来検討されてきた等価負荷抵抗を用いた解析手法から送電側および受電側の電圧比を用いて特性解析を行う新たな設計手法を提案し,ワイヤレス給電におけるシステム構成の分類と設計指針を示す画期的な手法を示した。より一般的なワイヤレス給電システムまでを考慮に入れた制御設計について言及し,当初の計画以上の進捗が得られた。 2) 送電開始時におけるソフトスタート動作の実現:これまでに検討されていなかったワイヤレス給電システムの過渡特性に着目し,新たな伝達関数モデルの導出および過渡解析の手法を確立した。本研究では意図しない過渡特性による機器破損や設備容量の増大化を防ぐ画期的な制御手法を提案し,模擬実験装置による理論検証だけでなく,実車走行試験に向けた大電力系の実験装置にも実装を進めている。 3) 実車走行試験に向けたインフラ構築:実際の電気自動車を用いた走行中ワイヤレス給電を実証可能なインフラ設備を日本で初めて東京大学柏キャンパスに構築し,数kWクラスの大電力実験が可能な環境を整えた。本成果は次年度以降の実車走行試験につながるだけでなく,これまでに多くのデモンストレーションを行ったことで学内外の大きな反響を呼んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに提案した走行中ワイヤレス給電における制御設計とシステム構築に関する知見をもとに,実際の電気自動車を用いた実車走行試験に取り組む。模擬実験装置を用いた理論検証から実際の道路や車体の影響までを含めた,より実用に近い環境で実験検証を行うことで新たな課題の抽出および更なる技術提案を行う。特に,クルマの走行にともなう送受電器の位置ずれやクルマのピッチングなど,動的な環境変化が電力制御系に与える影響について考察し,これらに対して新たな提案を行っていく。また,本研究で主な着眼点としている,システムの動特性を取り扱った新たな制御設計論およびシステム構築法を確立していく。 これまでに当初の計画以上の成果が得られていることから,高応答な制御システムの検討,高度なエネルギーマネジメント技術の開発,さらには低コストかつ信頼性の高い車両検知技術の提案など,電気自動車の走行中ワイヤレス給電に関わる制御システムについて幅広く取り組み,実用に耐えうるシステム全体の制御技術の確立を目指す。さらに,環境変化やパラメータ変動までも考慮に入れたロバスト性に優れるワイヤレス給電システムについても検討し,次世代のシステム設計につながる,新たな技術課題についても明確化したいと考えている。このほか,電気自動車の走行中ワイヤレス給電システムで得られた動特性に対する知見をもとに,より一般的なワイヤレス給電システムに対しても優れた電力制御手法の提案を行っていく。 本研究によって得られた成果は国内外で学会発表を行うとともに,これらを体系的にまとめた学術誌論文を投稿していく。また,アウトリーチ活動についても積極的に実施し,本研究に枠組みにとどまらず,将来の電気自動車や交通インフラまでを考慮に入れた画期的なシステム創造に向けた議論を行っていく。
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Research Products
(17 results)