2017 Fiscal Year Annual Research Report
セルフ・コンパッションとメンタルヘルスリテラシーの向上が援助要請に与える影響
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16J07022
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Research Institution | Tokyo Seitoku University |
Principal Investigator |
佐藤 修哉 東京成徳大学, 応用心理学部, 特別研究員(PD) (20793243)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | セルフコンパッション / 援助要請 / セルフスティグマ / 恥 / メンタルヘルスリテラシー / 予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究Ⅰでは,前年度得られたデータを活用し,さらにサンプルサイズを増やし,再分析を実施した。援助要請スタイルに応じて,自立型,過剰型,回避型の3タイプに分類した。さらに,それぞれの援助要請スタイルに応じて,セルフ・コンパッションと援助要請との関連について,相関係数を算出した。おおむねいずれにおいても有意な相関は確認されなかった。一方,友人への援助要請については,いずれのスタイルにおいても有意な相関を示す変数が確認された。特に,回避型においては他のスタイルと比較して多くの変数で有意な相関が確認された。 以上より,専門家への援助要請については,直接セルフ・コンパッションが関連してはいないことが示された。友人への援助要請については,セルフ・コンパッションが直接関連することが明らかになった。特に,もっとも支援が必要と推測される回避型において多くの有意な関連が確認されたことは,今後,コンパッションを基礎とした介入により援助要請が促進される可能性がある。自立型と過剰型についても,コンパッションを基礎とした介入を実施することにより,より適切な援助要請が可能になる可能性が示唆された。 研究Ⅱでは,専門家への援助要請とセルフ・コンパッションの関連についてさらに調査を行った。先行研究や臨床心理士との議論を踏まえ,関連が強いと推定される変数を絞り込んだ。それにより,セルフ・コンパッションと援助要請の他に,恥感情とセルフスティグマも同時に取り上げ,関連性を検討することとした。 階層的重回帰分析の結果,自己批判因子,自分が疾患に罹患した場合の恥因子,内的な恥因子,自信のなさ因子が援助要請に関連していた。これにより,セルフ・コンパッションは恥感情やセルフスティグマを媒介することで援助要請に関連していることが明らかとなった。これらを改善することにより援助要請が改善される可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
心理専門職への援助要請にはセルフコンパッションは直接関連しないという昨年度の結果を踏まえ,より詳細に調査を実施した。その結果,セルフコンパッションは,恥感情とセルフスティグマが媒介する形で心理専門職に対する援助要請と関連していることを明らかにすることができた。セルフコンパッションと援助要請の関連衣ついては,これまで国内外を含め先行研究がさほど存在していなかったが,これまでの研究で,着実に関連性を明らかにすることができている。
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Strategy for Future Research Activity |
セルフコンパッションと援助要請は,援助要請先に応じて,それらが直接関連する場合もあれば,そうでない場合もあることがこれまでの調査で明らかになってきた。援助要請先によっては,セルフコンパッションを含む複数の変数が複雑に関連している可能性が示唆されているため,より綿密にそのメカニズムを明らかにしていく必要がある。 したがって,将来的には,援助要請を促進するための心理学的介入を実施する必要があるが,そのために今年度はより踏み込んだ調査を行い,関連性の詳細を明らかにしていく。 そこで,今年度は,これまでの受入研究室での指導に加え,コンパッションに関して多数の研究論文を発表しているクイーンズランド大学の研究者の下でも,研究計画の策定と調査を行う。
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Research Products
(2 results)