2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J07039
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀内 雄太 東京大学, 大学院総合文化研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | Yip1Aタンパク質 / 膵β細胞 / インスリン分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題においては、膵β細胞において糖尿病態発症に関与する因子の探索を大きな目的として、関連候補であると考えられる膜タンパク質Yip1Aの機能解析を遂行している。本年度における当初の目標として、siRNAを用いたタンパク質の発現抑制条件の検討、抗Yip1A抗体の再検証、Yip1A発現抑制時のインスリン分泌への影響の精査、Yip1Aと相互作用するタンパク質の探索、の四点を設定し、研究を進める予定であった。 (1) siRNAによる発現抑制検討について 膵β細胞由来細胞株、MIN6細胞を用いて、市販されているYip1A(Yipf5)標的siRNA導入後のYip1AのmRNAレベルでの発現量をqRT-PCR法によって確認した。その結果、一定の発現抑制は確認できたものの、MIN6細胞の培養条件によってYip1AのmRNA量に大きく変化が出ることを発見した。具体的には、低グルコース濃度の培地を用いて培養した時(低グルコース培養時)にはYip1AのmRNAの発現量が少なく、高グルコース培養時にはYip1AのmRNA量が増加していた。培養の途中で培地の交換を行った際にも同様の傾向が見られたことから、培地のグルコース濃度依存的にYip1Aの発現量が変化する経路の存在が示唆された。その一方で、高グルコース濃度の培地で培養を続けた際にはYip1Aの発現量が徐々に減少することも明らかになり、細胞の代謝そのものと密接に関係することが考えられた。そこで予定を修正し、(4)Yip1Aと相互作用するタンパク質の探索について解析を進めることとした。なお、(2)抗Yip1A抗体の再検証、(3)Yip1A発現抑制時のインスリン分泌への影響の精査については、本年度は行わなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は当該年度において、主に膜タンパク質Yip1Aの機能解析において重要となる実験条件の検討を行った上で、実際にその機能解析に向けた研究を進めていく予定であった。その中で設定した四点のマイルストーンについて、順調に進んだと言えるのは二点であり、その観点からは少し計画が遅れていると考えられる。特に膵β細胞に特異的な機能であるインスリン分泌とYip1Aタンパク質との関連を明らかにすることについて、詳細な解析まで進めなかったのは残念だったが、その代わりに、Yip1Aがインスリン分泌よりも前段階の、代謝の過程やインスリン分泌顆粒の形成、輸送等に関与している可能性を示唆することができた。 そこで、当初の予定から少し軌道修正が必要となったものの、Yip1Aタンパク質がより広範な機能と関係することが考えられたため、膵β細胞以外の細胞においてもその機能を確かめることとした。そしていくつかの細胞種及び細胞現象について確かめる中で、ヒト子宮頸癌細胞由来の細胞、HeLa細胞においてYip1Aが細胞死の抑制に関与していることが確認できた。以前の自身の研究から、膵β細胞においてYip1Aが細胞死に関与することが示唆されていたが、その可能性を支持する結果が得られたことは大きな進展であると考えられる。 また、この過程でタンパク質と細胞死との関係を明らかにする実験手法を多く実践することができたため、今後は特に膵β細胞における細胞死についてもYip1Aがどのように関係するかを詳しく解析することが可能になると考えられる。これらのことから、当研究課題は現在まで概ね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当研究課題における今後の推進方策としては、まずYip1Aタンパク質と相互作用するタンパク質を探索することを目指す。これは本年度の目標の一つでもあったが、これまでの研究結果からYip1Aタンパク質が膵β細胞の基本的な代謝機構に影響を与えることが示唆されているため、特にグルコースを代謝する解糖系に着目してYip1Aと相互作用するタンパク質があるかどうかを確かめる。またそれと並行して、Yip1Aがインスリン分泌顆粒の動態に影響を与えている可能性も考えられることから、膵β細胞におけるインスリン分泌過程のタンパク質との相互作用についても確認する予定である。 そして、現在はマウス由来膵β細胞の一種、MIN6細胞を用いた実験を主に進めているが、他の膵β細胞種(NIT-1細胞やβ-TC-6細胞)においても同様の結果が得られるかどうかを確かめる。特に、これまで結果が得られているグルコース濃度依存的なYip1AのmRNA量変化が他の細胞種においても同様に起こっているかどうかを確かめることで、これが実際に膵β細胞において普遍的な現象であるのかどうかを明らかにすることを目指す。 更に、Yip1Aタンパク質が膵β細胞における細胞死に関与している可能性についても研究を進める。特に膵β細胞死の原因の一つ、小胞体ストレス誘導性アポトーシスについて、これまでの実験結果からYip1Aの関与が示唆されており、この可能性について更なる解析を進める予定である。
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Research Products
(1 results)