2016 Fiscal Year Annual Research Report
太陽観測衛星「ひので」で探る太陽光球における対流構造と磁力線の相互関係
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16J07106
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
大場 崇義 総合研究大学院大学, 物理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 太陽 / 対流 / 分光 / 光球 / 画像回復 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの解析において得られた対流構造は、「上昇流: 強, 下降流: 弱」という関係を示していた。しかしながら、光球対流構造の理論研究で予想されていたのは、上層部でガスの放射冷却による圧力勾配を作ることでもたらす「上昇流: 弱, 下降流: 強」という大小傾向であった。つまり、本解析結果と理論との予想は、逆の大小関係である。その原因としては、望遠鏡の結像性能による画像の劣化によって引き起こされると考えられたため、画像回復手法を新たに導入することで問題点の解決を目指した。画像回復手法のベースとしては、Richardson-Lucy (RL) 法と呼ばれるものを用いた。RL法は、太陽物理学の分野で用いられる手法であるが、ノイズ成分を増大させる難点を抱えていた。そこで、申請者は、正則化項(ノイズ成分の増幅を抑制する項)をRL法に新たに組み込むことで、問題解決を目指した。なお、その手法に対する妥当性の検証する必要があったため、数値計算コードの開発が急進的であるドイツ/マックス・プランク研究所へ渡航を実施した。習得した数値シミュレーションコードから光球大気の画像を再現してテスト画像として用いた結果、ノイズ成分の増幅を抑制した上で、従来用いられたRL法よりも画像を精度良く復元できることを確認した。さらに、本手法を「ひので」の分光データへ適用したところ、対流速度場が、理論で予想されていた傾向へ大きく近づくことが確認できた。本研究成果については、国内の多数の学会(天文学会年会・太陽研究者連絡会シンポジウム・宇宙科学シンポジウム)において報告した。また、さらに詳細に解析した成果について、今後国際学会にて発表し、論文に投稿する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
予定されていた研究計画に従い、太陽光球における対流構造を決定するにあたって手法の妥当性を検討した。その結果、理論で予想されていたものと異なる対流構造を取得している可能性が、新たに判明した。それには、望遠鏡の像の結像性能による画像の劣化が原因と考えられたが、新たに画像復元手法を適用することでこれまでの観測研究で捉えられなかった対流構造を取得することができた。この進捗により、対流運動の理解に対する観測結果・理論計算での乖離を解消する成果が得られ、光球の対流構造の理解をより進展させることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度においては、前年度で開発した画像回復手法を用いて、磁気大気への作用が期待されている水平対流運動の解析を実施する。具体的には、これまでの研究で開発した対流構造の立体視手法を用い、平均的な3次元光球対流構造モデルの構築を目指すというものである。モデル構築後、空間依存性(粒状斑・間隙)を抽出し、それぞれの水平対流速度場を決定する。これは、磁束管が多く分布する間隙において水平対流速度場を得ることになるという点で重要である。得られた対流構造により、「磁束管・対流運動の相互作用によるコロナ加熱への寄与」について議論し、研究成果をまとめる予定である。
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