2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J07131
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大桃 理志 新潟大学, 大学院自然科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ジアザポルフィリン / 色素増感太陽電池 / 吸収特性 / 電気化学特性 / 機能性色素 |
Outline of Annual Research Achievements |
優れた光捕集能を有する5,15-ジアザポルフィリン誘導体を色素増感太陽電池へ応用することを目的とし、本年度は三つの課題、(i)ジアザポルフィリンのβ位に非対称に置換基を導入する手法の確立、(ii)得られた誘導体の構造-物性相関の解明、および、(iii)色素増感太陽電池への応用に取り組んだ。以降、それぞれの課題に関する研究成果を述べる。課題(i):トリブロモジピリンを用いた鋳型環化反応を用いて、3,7-ジブロモジアザポルフィリンを合成し、引き続き、クロスカップリングとブロモ化を段階的に行うことで、ジアザポルフィリンのβ位に非対称にドナー部位とアンカー部位を導入した誘導体を合成することに初めて成功した。課題(ii):得られた誘導体の吸収・発光スペクトルを測定し、非対称置換体では、可視部のすべての波長の光を捕集するユニークな吸収特性が発現していることを見出した。これは、ドナー部位を導入したことでHOMO-LUMO遷移に高いCT性が発現したためであると考えられる。課題(iii):得られた色素を用いて色素増感太陽電池を作製し、光電変換効率と各種パラメーターを測定した。その結果、非対称置換体は、ドナー部位を持たない誘導体よりも10~20倍高い光電変換効率を示すことが明らかとなった。これは、非対称置換によりHOMOの軌道係数が大きな部位が酸化チタン表面から空間的に離れ、逆電子移動が抑制されたこと、および、長波長領域の光捕集能が向上したことに由来すると考えている。また、得られた光電変換効率(最大2.0%)は、ベンゾ縮環していないジアザポルフィリン増感剤の中で最高値となったことから、ジアザポルフィリンの非対称置換という分子設計の妥当性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非対称置換ジアザポルフィリン誘導体の合成法を確立し、得られた誘導体の構造―物性相関を明らかにした上で、色素増感太陽電池の増感剤としての性能を評価することに成功した。デバイス性能に改善の余地は残されているものの、非対称置換体の光電変換効率はベンゾ縮環していないジアザポルフィリン増感剤の中で最高値となったことから、ジアザポルフィリンの非対称置換という分子設計の妥当性が示された。したがって、研究計画全体としては、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ジアザポルフィリンの医療用増感剤への応用を目的とした課題に取り組む。具体的には、まず、近赤外部に高い光捕集能を有する水溶性ジアザポルフィリン誘導体を合成し、その光物性を評価する。有望な候補化合物は、一重項酸素発生効率と細胞毒性を評価する予定である。
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