2016 Fiscal Year Annual Research Report
酵素バイオ燃料電池による電気エネルギーと有用物質の同時生産
Project/Area Number |
16J07225
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
作田 陸 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | バイオリファイナリー / グリーンケミストリー / サステイナブルケミストリー / 生物電気化学 / バイオマス / アルダル酸 / ウロン酸 / 基幹化合物 |
Outline of Annual Research Achievements |
バイオマス由来の化成品の環境調和的生産に向けて、高い反応特異性を有する酵素が触媒として期待されている。化成品生産が酸化を介する場合、取り出された電子は酸素などの電子受容体に通常捨てられている。しかし、電池のアノードを電子受容体として利用し、カソードの酸素還元反応と組み合わせられれば、化成品と同時に電力を生産できる。そこで、ピロロキノリンキノンを補酵素とするグルコース脱水素酵素(PQQ-GDH)をアノード触媒とし、ペクチンからガラクタル酸と電力を生産する電池を構築する研究を進めている。 ペクチンは藻類や殆どの陸生植物に含まれている多糖であり、果皮や甜菜パルプなどの食品加工残渣などからも大量・安価に得ることが出来る。D-ガラクツロン酸という糖酸が主要構成単位であり、その1位の酸化で得られるガラクタル酸は基幹化合物として期待されている。PQQ-GDHは本来D-グルコースの1位部分を酸化する酵素であり、D-ガラクツロン酸のような糖酸の酸化は報告されていなかった。 PQQ-GDHによるD-ガラクツロン酸酸化触媒反応の進行を観測し、核磁気共鳴分光法によりガラクタル酸とそのラクトンの生成を確認した。そこでPQQ-GDHを電極触媒とする電極を作製し、電気化学的なガラクタル酸生産を実現した。以上に関する研究内容について学術雑誌に論文として投稿・掲載すると共に国際学会において発表を行っている。アノードとしてPQQ-GDH修飾電極、カソードとしてビリルビン酸化酵素を修飾した電極を用いてD-ガラクツロン酸を燃料とするバイオ燃料電池を構築し、静置溶液を用い求めた至適条件で電池特性の評価を行った。これらに加えて藻類に含まれる多糖の構成成分からの酵素を用いた数種類の基幹化合物の合成も実現した。酵素を電極上に固定する方法を開発するため共同研究を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
D-ガラクツロン酸を燃料とし、ガラクタル酸と電力を同時生産する酵素バイオ燃料電池を構築するという平成28年度の目標を達成した。加えて、藻類中の多糖からの別の基幹化合物の生産を実現し、酵素を電極上に固定する方法を開発するための共同研究を進めることができた。その為当初の計画以上に研究成果を得ることが出来たと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
ペクチン分解によるD-ガラクツロン酸生産系と酵素バイオ燃料電池とを連結し、溶液のフローにより燃料(D-ガラクツロン酸)の供給と生成物(ガラクタル酸)の分離を容易に行う同時生産系を構築することが本研究の最終目標である。そのために、これまでの実験データから溶液の流速、基質の濃度、用いる酵素量などを決定する。フローセル型のバイオ燃料電池による同時生産を実現し、最適化を行った上で論文として報告する。また、藻類由来の多糖からの基幹化合物の生産に関して論文として発表する。
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Research Products
(6 results)