2016 Fiscal Year Annual Research Report
動的共有結合化学に基づく修復性とメカノクロミック特性を併せ持つ架橋高分子の開発
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16J07264
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
小菅 孝浩 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 動的共有結合化学 / 修復性材料 / メカノクロミック材料 / 架橋高分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
ジアリールビベンゾフラノン骨格は室温において対応するアリールベンゾフラノンラジカルと解離・付加の平衡状態にあるため、結合組み換え反応が進行する。また、ジアリールビベンゾフラノン骨格は力学的刺激により青色を呈するアリールベンゾフラノンラジカルを生じる。本研究ではこれらの2つの特性を利用した機能性材料に関する研究を行っている。今年度は、ジアリールビベンゾフラノン骨格を有するポリマー/シリカコンポジットエラストマーについて、引張によるジアリールビベンゾフラノン骨格の開裂メカニズムの詳細な評価を、電子スピン共鳴測定法により行った。その結果、ポリマーソフトドメインとシリカハードドメインの界面近傍に位置するジアリールビベンゾフラノンが選択的に引張により活性化されていることが示唆された。このメカニズムを踏まえて、自己修復性とメカノクロミック特性を両立することを目指し、自己修復性を発現すると考えられるポリマーソフトドメイン中と、メカノクロミック特性を発現させると考えられるポリマーソフトドメインとシリカハードドメインとの界面の両方にジアリールビベンゾフラノン骨格を有する新規ポリマー/シリカコンポジットを設計した。素早く延伸することで青色を呈することが確認できたが、あまり高い修復性は観測されなかった。現在、分子設計の最適化を行うことによって力学応答性と自己修復性を向上させることを試みている。 また、ソフトドメイン中にジアリールビベンゾフラノン骨格を有し、架橋点間分子量の異なる様々な架橋高分子を合成することに成功し、電子スピン共鳴測定法などにより詳細な評価を行っている。近日中にデータをまとめて、論文の執筆を開始する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は主に、室温において解離・付加の平衡状態にあり、また、力学的刺激により青色の安定ラジカルを生じるジアリールビベンゾフラノン骨格を「高分子ソフトドメインとシリカハードドメインの両方に導入されているコンポジット」の合成と評価を行った。高分子ソフトドメインの成分としてポリ(アクリル酸ブチル)、ポリ(アクリル酸エチル)、さらにはポリオール成分としてポリプロピレングリコールを有するポリウレタンを用いたハイブリッドの合成を行った結果、あまり高い特性ではないものの修復性とメカノクロミック特性を両立させることができ、研究はほぼ期待どおりに進捗した。当初の計画通り、来年度に高分子鎖の一次構造を変化させて修復性を向上させる計画であり、それと併せて高分子成分の種類やシリカ成分の割合などを最適化させる計画である。
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Strategy for Future Research Activity |
まずは、高分子成分の種類やシリカ成分の割合などを変化させる検討を行い、優れた修復性とメカノクロミック特性を両立させることを目指す。また、高分子鎖の一次構造を変化させて、修復性を向上させる検討を行っていく。また、シリカ粒子とポリマー鎖との界面にジアリールビベンゾフラノン骨格を有するコンポジットの系について予備的な実験についても着手する。
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Research Products
(8 results)