2017 Fiscal Year Annual Research Report
家畜をモデルとした卵子脂質量を制御する分子背景とメタボリックメモリーに関する研究
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16J07329
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture |
Principal Investigator |
伊丹 暢彦 東京農業大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 卵子 / ミトコンドリア / 脂肪酸 / アセチル化 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は2年目に、細胞外脂質と卵子内ミトコンドリアとの関連について精査した。過剰な脂肪酸が卵子内ミトコンドリアに及ぼす影響を検証するため、肥満により卵胞液中で増加するパルミチン酸をブタ卵子体外成熟培地に添加した。パルミチン酸は卵子中のミトコンドリア数を変化させなかったが、ミトコンドリア活性を著しく低下させていた。この原因を解明するため、ミトコンドリア膜タンパクとアセチル化タンパクを共染色した結果、パルミチン酸添加卵子において、より2つのシグナルが共局在しているという結果が得られたため、ミトコンドリアタンパク質が高アセチル化状態にあることがミトコンドリア機能低下の原因であると考えられた。また、ミトコンドリアタンパク質の脱アセチル化を制御しているSIRT3の発現や、その上流因子であるAMPKの活性レベルがパルミチン酸添加卵子で減少していた。さらに、AMPKの活性低下の要因が、パルミチン酸添加により卵子内にセラミドの蓄積が増加したことによるものだと判明した。そこでAMPKの活性化剤であるAICARを用いたところ、パルミチン酸添加によって増加していたミトコンドリアタンパク質のアセチル化レベルが減少し、低下していたミトコンドリア機能も回復した。この結果より、肥満をモデルとした過剰な脂質の環境が卵子に与える後天的修飾を発見し、その改善方法まで見出すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2年目では、肥満や飢餓の際に卵子周辺で増加する脂肪酸を用いて、これが卵子の後天的修飾に及ぼす影響を解明することができた。当初の予定通り、卵子の外的環境を変えることで卵子のメタボリズムを長期的に変える可能性を見出すことができたため、順調に進行していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は外的環境の変化に伴う卵子内での後天的修飾の変化が、長期的に維持されることで次世代の正常性に影響を与えるのかを調査する。ミトコンドリアタンパク質やゲノムの異常を引き起こす培養系を用いて卵子を作出し、胚盤胞期胚まで発生させた後に異常が引き継がれているのかを検証する。
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