2017 Fiscal Year Annual Research Report
多様な花色を有するミスミソウを用いた集団内花色多型維持機構の解明
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16J07424
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
亀岡 慎一郎 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 花色多型 / 平衡選択 / ミスミソウ |
Outline of Annual Research Achievements |
ミスミソウの花色多型の維持機構解明を目指し、今年度は主に野外での調査、及びそのデータ解析に努めた。 これまで集団内の表現型多型が維持される仮説としては、「負の頻度依存選択」による維持機構が提唱されていた。これは、集団内の少数派が有利な状況があるために、恒久的に多型が維持され続けるという仮説であり、無報酬花の花色多型でも「訪花昆虫への騙し効果」として実証されている。しかし、本仮説の実証的な研究は一例のみしかなく、検証が必要であるとされてきた。そこで今年度は花色頻度の異なる17集団を対象に調査を行い、複数の要素を計測し、一般化線形混合モデル(GLMM)を用いて繁殖成功度に最も寄与している要素の検証を行った。結果、花色の頻度と繁殖成功度の間に単純な負の関係性は示されなかった。GLMMのモデル選択の結果は、花色頻度と花色の種類の交互作用を含んだモデルを採択した。花色ごとに繁殖成功度と花色の頻度の関係を確認したところ、青色では繁殖成功度との間に負の関係性が、白色では正の関係性が示された。これまで提示されていた「負の頻度依存選択」による単純な維持機構は、多様な花色を有するミスミソウには当てはまらない可能性がある。 また、繁殖成功度と食害を受けた花弁の面積との間には正の相関があった。これは、花弁の食害を受けた個体は繁殖成功度が下がることを示している。さらに、この食害の受けやすさが花色によって異なっていた。花弁の食害率は青<赤<白の順で大きくなり、白色が最も食害を受けていた。以上の結果は、色ごとに異なる選択が働いている可能性を示しており、上記の拮抗的な頻度依存の存在も踏まえると、複数の選択圧が複雑に交互作用を持つことで、多様な花色が維持されているのではないかと推測している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度に計画していた、頻度依存性の検証は滞りなく終了した。花色頻度の異なる集団を複数用い、種子生産量だけではなく、葉の数や食害の有無など複数の要素を記録することで、総合的に繁殖成功度に寄与する要素を特定する事に成功した。また、色の違いに関わる遺伝子の特定も順調に進んでおり、分子遺伝学的な側面からの維持機構へのアプローチも滞りなく進んでいる。後者の研究に関しては論文化し、投稿を済ませている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は分子遺伝的な手法を用いた解析に力を入れ、これまでに得られた花色関連遺伝子群の配列をもとに、それぞれの花色が生じる遺伝的なメカニズムを明らかにし、色の決定に関わる遺伝子やそのアリルが集団の中でどのように分配され、集団の中に供給されているのかを検証していく予定である。 また、フィールドでの調査は引き続き行う。インターバル撮影などを用いて花弁にダメージを与えている食害者の特定を行うと共に、花弁の食害と、葯や柱頭など、他の花器官との食害度の関係性を明らかにすることを予定している。
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Research Products
(5 results)