2016 Fiscal Year Annual Research Report
グラフェン量子ドットにおける単キャリア輸送現象と量子情報デバイス応用の研究
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16J07438
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
岩﨑 拓哉 北陸先端科学技術大学院大学, マテリアルサイエンス研究科, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | グラフェン / 量子ドット / 単電子トランジスタ / ドーピング / アニール / チップ増強ラマン分光 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラフェン中の電子はデコヒーレンス時間が長いため、量子情報処理デバイス応用に期待されている。グラフェン中の電子を制御するために、グラフェンで量子ドットデバイス・単電子トランジスタを作製し、単一キャリア輸送特性の測定を行った。デバイスは単一ドット構造に設計・作製したが、エッチング時に入ってしまうエッジラフネス及び電荷不純物によるドーピングの影響が大きく、ディラック点付近の単一キャリア輸送特性の観測は困難であった。 ドーピングの問題解決のために、まずはチップ増強ラマン分光法(TERS)を用いてグラフェン中のドーピングの空間的な広がりの検出を行った。これまでほとんど報告例のなかったSiO2/Si基板上グラフェンに対してTERSを行い、空間分解能~228 nmを達成した。標準的なデバイス作製プロセス後のグラフェンにおいて、1 μm以内で大きくドーピング濃度が変化していることを明らかにした。 次にアニールによりドーピングの軽減・制御を試みた。アクセプターとして振舞うグラフェン表面やグラフェン-基板間のガス分子や不純物は、真空中でアニールすることで除去可能であることが判明した。真空中で長時間アニールするとSiO2表面に発生するダングリングボンドによる電荷遷移が発生し、グラフェンはnドープされる。一方、先に水素混合ガス中でアニールした場合、真空中で長時間アニールしてもグラフェンがnドープされにくい傾向が見られ、移動度および電気伝導率の減少を観測した。密度半関数法により計算した結果、水素アニールによりグラフェン-SiO2間の距離が縮まることが分かり、クーロン散乱による電気特性の劣化が示唆された。また、グラフェン-基板間に水素が入り込み、SiO2のダングリングボンドが水素で終端されnドープされにくくなったと考えられる。結果として、条件を選択してアニールすることで電荷中性点位置の制御を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究で、グラフェンで単一の量子ドット構造を作製しても、ポテンシャル不均一性により、単一クーロンアイランドを介したキャリア輸送特性を得ることは難しいことが分かった。ドーピングの空間的広がりを検出した結果、グラフェン中に単一のクーロンアイランドを得るためにはドーピングが無視できないことが示唆された。 現在まで、グラフェン(量子ドット)デバイスの問題点であるドーピング状態を示す電荷中性点位置の制御に成功している。また、もう一方のエッジラフネスの問題に関しては、これまで様々なナノスケール構造のデバイスを作製し測定したところ、デバイス構造を最適化することで最小限に抑えられる可能性があるという知見を得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はデバイス構造の最適化を行うとともに、基板に原子レベルでフラットな材料である六方晶窒化ホウ素を用いて作製し、ドーピング及びエッジラフネスの影響のさらなる低減を図る。エッジラフネスに関しては、ヘリウムイオン顕微鏡を用いたイオンビームミリング加工などが解決策として考えられる。ドーピングが制御されたグラフェンにおいて、ディラック点における単一のクーロンアイランドを介した単一電子・正孔輸送特性の観測を目指す。
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