2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J07507
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鄭 昇明 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 宇宙物理 / 銀河 / ブラックホール / 初期宇宙 / 星形成 / 輻射輸送 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年数多く観測されている超大質量ブラックホール(BH)の起源を探るべく、その種となるBHの形成過程を計算している。具体的に、初期宇宙における星形成過程を詳細に調べることで星が死後残すBHの質量を推定する。初期宇宙において形成される星の質量は、その環境に大きく依存することが知られている。今年度は、以上の星形成過程にあるガス雲の進化を流体計算を用いてより詳細に調べた。これにより、各ガス雲において形成される星の最終質量を見積もる。 本年度は主に以下のことを調べた。すなわち、(1)周辺銀河からの電離輻射がガス雲の崩壊に与える影響、(2)このガス雲において形成される星質量の計算、を調べた。(1)に関してはすでに論文になっており、(2)は現在論文にまとめているところである。 (1)について、従来まではこのような電離輻射の効果は流体計算において考えられてこなかった。一方で、近年Regan et al.(2016)により電離輻射が崩壊を阻害する効果について真剣に議論されるようになった。そこで我々は、近傍銀河からの電離輻射をRay-tracing法により評価し、その効果を調べた。結果としては、電離輻射がガス雲の崩壊を阻害することは稀であり、多くの場合その影響は小さいことを示した。 (2)について、我々はガス雲が崩壊した後に残る原始星への質量降着過程を計算することにより、星の最終質量を見積もった。原始星ができた後は、その周辺にガス円盤が形成される。この円盤は重力的に不安定で、多数の分裂を経験する。今回は2つの雲について計算し、その進化を追った。結果としては、ガス雲の置かれている環境が最終質量の決定に大きくかかわっていることがわかった。具体的に近くに大きな銀河が存在する雲では、多数の分裂が観測され個々の星の質量は小さくなった。初期宇宙においてこのような環境の重要性を指摘したのは本研究が初めてである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本課題では初代銀河において形成されるブラックホール(BH)の質量を統計的に理解する予定であった。現在のところ、最も重たいBHを形成するガス雲の進化の計算が終了した段階である。具体的には初代銀河における始原的ガス雲のうち、最も強い輻射を受けたガス雲の進化を計算し、最終的に形成されるであろう星質量を見積もった。この計算は、BHの質量関数の質量の大きい端での振る舞いを理解する端緒となるであろう。 一方で、中間的な質量(100 Msun ~ 10000 Msun)での質量分布については現在計算し結果をまとめているところである。輻射が強ければ強いほど重たいBHが形成されると考えられている。そのため、銀河からのある程度強い輻射を受けた始原的ガス雲を幾つか選定しその崩壊過程を追った。これらのガス雲で形成されるであろうBHの性質について現在解析しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はまず、現在計算を行っている初代銀河におけるBH質量分布の計算の結果をまとめる予定である。このためにも、ガス雲の崩壊過程、また、そのガス雲において形成されるであろうBHの質量の解析・推定を行う。 加えて、これらのガス雲において形成されたBHの成長についての計算も行う予定である。具体的に、宇宙論的な初期条件から出発していくつかの始原的ガス雲を選定する。選ばれたガス雲においてある質量を持ったBHを置き、そのBHへの質量降着過程を計算する。ここでは、BHをもしたBH粒子を用いて、このBH粒子の周囲~100 pcへの質量降着率をもとにして成長過程を計算する。
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