2017 Fiscal Year Annual Research Report
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16J07527
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩嵜 諭嗣 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 神経科学 / 大脳皮質 / パッチクランプ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請研究では、マウスによる恐怖観察系を用いて、経験に依存した共感の調節機構の解明を目的としている。仲間のマウスが電気ショックを受けている様子を別のマウスに観察させると、観察マウスは自身が電気ショックを受けていないにも関わらず、恐怖反応である「すくみ反応」を表出する。このすくみ反応を示した度合いを共感の指標として定量した。前年度までの研究において、観察マウスが同じ電気ショックを事前経験していると共感行動が増大すること、さらに事前経験時と恐怖観察時に活動する細胞集団は有意にオーバーラップすることを明らかとしている。本年度は、経験に依存した共感の調節機構について薬理学的に検討した。これまでの研究により、共感を増大することが知られている神経ホルモンであるオキシトシンの受容体拮抗薬を事前処置すると、恐怖観察時のすくみ反応が低下することが明らかとなっている。そこで、オキシトシンと同様に抑制性神経伝達を促進するエタノールが共感に与える影響について検討した。エタノールをマウスに事前処置すると、恐怖観察時のすくみ反応が増大した。さらに、GABA受容体拮抗薬であるピクロトキシンを同時に投与すると、エタノールによるすくみ反応の増大が阻害された。このことから、エタノールは抑制性神経伝達を促進することで共感の増大を引き起こすことが示唆された。そこで次に、エタノールが神経伝達に与える影響を調べるため、急性脳スライス標本を用いてパッチクランプ法によりシナプス入力を調べると、エタノールによりシナプス入力の興奮抑制バランスが低下することが明らかとなった。以上の結果から、エタノールは抑制性神経伝達を増強することで経験に依存した共感を増大させることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、以前に立ち上げた恐怖観察系と、生化学的手法および薬理学的手法を用いてマウス共感行動の調節機構について明らかにした。また、パッチクランプ法を用いた電気生理学的検討により、神経細胞の興奮抑制バランスが共感を調節することを示唆する結果を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、神経細胞の興奮抑制バランスが共感を調節することを検証するため、遺伝薬理学的手法により神経細胞の興奮性を操作し、共感行動に与える影響を観察する。
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Research Products
(2 results)