2016 Fiscal Year Annual Research Report
インプリント遺伝子及びマイクロRNAに着目したマウスクローン胎盤過形成の原因解明
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16J07536
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
上村 悟氏 山梨大学, 大学院総合研究部, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | クローン胎盤 / 核移植 / インプリント遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
体細胞(卵丘細胞)クローンおよび受精由来の胎仔・胎盤を経時的に採取し(E(Embryonic day)13.5~19.5)、観察を行った。得られた胎盤重量を計測したところ、E13.5のクローン胎盤と受精由来胎盤では重量差が認められないものの、E15.5では約2倍の重量差が認められた。一方で、E13.5、E17.5およびE19.5ではクローンと受精由来胎仔重量に差が見られないのに対し、E15.5ではクローン胎仔重量減少を示したことから、クローンでは一過的な発生遅延が示唆された。クローン胎盤過形成はE13.5~15.5の間で顕在化するとともに、E15.5で一過的な胎仔発生遅延が観察されることから、E13.5~15.5の時期を詳細に調べることが重要であることが示唆された。 体細胞のみならずES細胞核移殖クローンでも胎盤過形成が起こることが知られている。マウスES細胞の樹立および多能性維持に、Mek1/2阻害剤(PD0325901)とGsk3β阻害剤(CHIR99021)の添加が従来法(血清+LIF添加)よりも効果的であることが知られている (conditional 2 inhibitor: c2i)。さらに、この方法を改変した、alternative 2 inhibitorが開発された(Yagi et al., Nature, 2017)。a2iで樹立した雌型ES細胞をドナーとした核移殖を実施し、E19.5で胎盤を採取した。採取した胎盤の組織切片を作成し観察したところ、体細胞クローン胎盤と比較してa2i ESクローン胎盤重量が小さくなる傾向が観察された。胎盤組織切片観察により、体細胞クローン胎盤では既報の通りspongiotrophoblast layerの拡大やlabyrinth layerの異常構造が観察されるが、a2i 雌型ES細胞由来クローン胎盤ではそれらが是正されている可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初は体細胞クローンと受精由来胎盤の解析のみを実施する予定であったが、新規技術であるa2iで樹立したES細胞をドナーとして用いることにより、クローン胎盤過形成が改善される可能性が考えられた。これが解析に加われば、3種の材料で比較することができ、それらの差をより詳細に確認できる可能性が考えられた。実際に、a2iで樹立した雌型ES細胞をドナーとした核移殖クローンで胎盤過形成が改善される傾向が観察された。
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Strategy for Future Research Activity |
クローン胎盤過形成の原因解明のために、インプリント遺伝子(H19、HuR、Rtl1)およびmicroRNAに着目しその動態を明らかにする。体細胞クローン胎盤および受精由来胎盤のこれらの発現解析、in situ ハイブリダイゼーション、DNAメチル化解析を実施する予定である。雌型ES細胞と合わせて雄型ES細胞をドナーとしたクローンも実施し、解析を行っていく予定である。
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