2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J07613
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
平井 遼介 早稲田大学, 先進理工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
Keywords | 連星進化 / 超新星爆発 / 自己重力数値計算 / コンパクト連星形成 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は質的に異なる以下の2種類の研究成果が得られた。 (1)1つ目は、自己重力流体数値計算を高速化するスキームを開発したことである。通常、流体シミュレーションに自己重力を含める場合はポアッソン方程式を解くことになるが、これは楕円型の偏微分方程式であるため数値コストが非常に高いことが知られている。今回、申請者とカリフォルニア工科大学の長倉洋樹氏らを中心としてポアッソン方程式を近似的に解く手法を開発し、テスト計算として恒星同士の正面衝突をシミュレーションしたところ、計算時間がおよそ100分の1にまで削減できることがわかった。この成果はPhysical Review Dに論文として掲載された。その後、本手法がポアッソン方程式以外の一般の方程式にも適用可能な汎用性の高いものであることが明らかになった。 (2)2つ目は、iPTF13bvnという超新星の親星形成シナリオを再構築したことである。申請者のこれまでの研究でiPTF13bvnの親星伴星に関する予言をしていたが、追観測によってそれが間違いであることが昨年指摘された。それを受けもう一度親星の形成シナリオを考察し、伴星として巨大なブラックホールが存在する可能性が高いことを示した。この新シナリオはこれまでの全ての観測事実と矛盾がなく、もし正しければ今頃は超新星残骸中に中性子星とブラックホールの連星系が残されているはずである。これは、コンパクト連星の起源を探るという本研究課題の目的を達成する上で非常に重要な成果である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は計画段階では予定していなかった部分で大きく進展した。以下では順に進行度を述べる。 本研究課題は大規模な数値シミュレーションを行う必要があるが、系統的な調査を行うためには当初の想定よりもさらに数値計算コストを下げる必要があった。今年度の前半で開発した自己重力計算の新しい数値スキームは今後の研究計画を実施していく上で非常に強力な道具となる。 今年度の途中で、超新星iPTF13bvnの後期観測の結果が発表された。それにより、本研究課題の1つである、超新星爆風による伴星加熱モデルが否定されたように思われた。本課題を継続して実施する意義を探るためにも、iPTF13bvnの親星形成シナリオを再考する必要が生じた。今年度後半は、それまで提唱されていたいくつかのiPTF13bvnの親星形成シナリオを定量的に評価し否定した上で新たなシナリオを提唱するという成果を上げることができた。これによって超新星爆風による伴星加熱モデルは否定されないことがわかり、研究計画を予定通り実施していく意義が確認できた。それだけでなく、コンパクト連星形成に至る新たな道筋を発見した可能性もあり、本研究目的を達成する上で重要な成果となった。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画通り、超新星爆風による伴星加熱に関するシミュレーションを行う。今年度新たに開発した自己重力数値計算スキームを用いることで、大規模なシミュレーションを系統的に行うことが可能になった。来年度は星に超新星爆風が衝突する様子のシミュレーションに着手する。爆風によって伴星がどれほど加熱されるかを定量的に評価し、その結果として伴星から剥ぎ取られる質量や与えられる運動量、熱によって膨張する最大の半径などを調べる。また、伴星の構造や超新星親星との距離などを変えたシミュレーションを多数行い、パラメータ依存性も調べる。 以上を調べた上で、膨張した伴星が主星を飲み込むための条件を明らかにし、大質量連星の中でどれほどの割合がそういう状況になりうるかを評価する。
|
Research Products
(12 results)