2016 Fiscal Year Annual Research Report
プラズモン誘起電荷分離を用いた新規バイオセンサの開発
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16J07685
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
秋吉 一孝 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | プラズモン誘起電荷分離 / 局在表面プラズモン共鳴 / 電子移動 / ナノアンテナ効果 / 銀ナノキューブ |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、当研究室で以前に見出したプラズモン誘起電荷分離に基づいた、金属周囲の屈折率変化を電気信号として出力する局在表面プラズモン共鳴センサの高性能化を目指した。具体的には、異方性ナノ粒子である銀ナノキューブを用いることで、金属ナノ粒子の局在表面プラズモン共鳴に基づく電気化学応答型センサの電流応答の向上を試みた。その過程において、銀ナノキューブからの電気信号を増強する方法を見出した。 ITO透明電極基板上に酸化チタン薄膜を被覆し、直径80 nmの銀ナノキューブを担持した。この基板に単色光を照射すると、銀ナノキューブ中の自由電子の振動が光の電場振動と共鳴し、プラズモン誘起電荷分離によって共鳴状態の銀ナノキューブから酸化チタンの伝導帯へと電子が移動する。その結果、アノード光電流が流れた。しかし、電流が小さく、明瞭なピークは得られなかった。これは、銀ナノキューブ合成時に使用したポリビニルピロリドンが保護剤として銀ナノキューブ表面を覆い、銀ナノキューブから酸化チタンへの電子移動を阻害しているためと推察した。そこで、蒸着により銀ナノキューブを厚さ5 nm程度の金の薄膜で被覆した。金を被覆した電極についても同様に光電流を測定した結果、波長約550 nmにおいてピークが観察され、ピークにおける光電流は金の被覆がない場合の約20倍であった。この理由として、①銀ナノキューブまたは金被覆銀コアシェルナノキューブから酸化チタンへの電子注入が、金薄膜と酸化チタンとの良好な電気的接触により促進された、②金から酸化チタンへの電子注入が、銀ナノキューブの生じる近接場光により増強された(ナノアンテナ効果)、という2つのプラズモン誘起電荷分離に基づく機構が考えられた。この方法は、プラズモン誘起電荷分離の効率を改善するための新たな方法でもあり、その成果を学会発表や学術論文により報告できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
プラズモン誘起電荷分離に基づいた電気信号出力型プラズモンセンサについて、銀ナノキューブを利用することでセンシング感度の向上を目指した。しかし、化学合成した銀ナノキューブは絶縁性の保護剤で覆われている影響で、電気信号の強度が十分に得られないという問題が生じた。そこで、電荷分離効率を向上させるため、金属ナノ粒子に金の薄膜を被覆する方法を考案し、実証した。 この研究成果は、SPIE社(米)発行のJournal of Photonics for Energy誌に掲載され、国際的な学会の機関誌であるSPIE Professional Magazineでも紹介されるなど、国際的にも良い評価を受けた。一方、本来の研究テーマであるセンシングについては現在、感度向上のための要素技術開発に取り組んでいる段階であり、期待通りとまでは言えないが、総合すると研究課題の進捗状況については概ね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
金属ナノ粒子に金を被覆する薄膜被覆法について、プラズモン誘起電荷分離に基づくセンサへの応用を試みる。また、粒子間距離を制御することで得たプラズモンカップリング効果により、電気化学応答型センサの高感度化を目指す。具体的には、電子線ビームリソグラフィ技術などによりカップリングを制御し、感度の最適化を行う。
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Research Products
(6 results)