2016 Fiscal Year Annual Research Report
航空機の環境適合性・安全性向上のための直交格子法に基づく非定常流の数値解析
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16J07740
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
玉置 義治 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 乱流解析 / 直交格子 / 埋め込み境界法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,本研究課題における基礎として,航空機等の壁面近傍に存在する乱流境界層を直交格子において再現する手法の開発を行った.直交格子では,物体が階段状に表現されるため,特に航空機のような高速・大規模な流れ(高レイノルズ数流れ)では,壁面近傍に存在する薄い乱流境界層が捉えれず,従来は解析が困難であった.開発した手法では,埋め込み境界法と境界層のモデル化を組み合わせ,さらに,壁面近傍の速度や渦粘性(乱流に伴う見かけ上の粘性)のプロファイルが直交格子上で解像できるよう乱流モデルおよび境界条件の修正を行うことで,この問題を解決した.開発した手法の検証計算として行った翼型周りの流れの解析においては,翼型表面における圧力,摩擦力や,翼型全体にかかる空気力が,従来の物体に沿う格子を用いた計算結果と高精度に一致することを示した.この成果については,航空系のトップジャーナルであるAIAA Journalに採択が決定している. 次に,この手法を用いた3次元計算として,航空機全機周りの定常乱流解析の解析を行った.計算結果では,航空機の巡行条件における衝撃波の位置,形状が参照結果と一致することを示した.また,抗力,揚力といった航空機に働く空気力の大きさについても定量的な比較を行い,正しい格子収束性が示されることを確認した.また非定常計算にも適用できるように手法を拡張し,航空機の高揚力装置から発生する空力騒音の解析も行った.この解析では従来の解析に比べ高解像度な解析が可能となる高次精度スキームも利用している.これらの解析結果については,AIAA(米国航空宇宙学会)等を含む国内外の学会,ワークショップにおいて報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究では,本研究課題を遂行する上での第一の目標として,直交格子における高精度な乱流解析を可能とした.特に壁面近傍の計算手法について確固とした理論的背景に基づいた手法を構築したことで,幅広い問題に適用可能となった.また,様々な問題で検証を行い,実験結果や他の数値解析結果と比較を行ったことで,計算コード全体の精度,妥当性が確かめられている. さらに,これらの大規模な解析を行うために,Message Passing Interface (MPI)を利用した計算の並列化や,格子生成の高速化等,計算コードの整備も並行して行った.現行の計算コードでは,航空機全機周りの格子(約3300万セル)を1時間以内に自動生成することが可能である.加えてMPIの実装によりスーパーコンピュータを利用した大規模並列計算が可能となっている, 以上のように,乱流解析の枠組みについては,当初の予想以上に高精度かつ高速なものが完成している.ただし,計画にあった格子の自動最適化については,実装上の困難により実現できていない.これらについては,手動での格子細分化範囲の指定をよりフレキシブルにしたことや,高次精度スキームの利用による解像度の向上により代替可能であると考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
現在までの研究により,直交格子を用いた大規模な乱流解析が可能となっている.今後は,研究課題である非定常流れの理解に向けて,さらなる手法の改良を行う.特に直交格子における非定常乱流解析はこれまでに例が少なく,乱流モデルや時間積分手法については未知の部分が多いため,直交格子に適した手法の選択あるいは新規開発が重要である.本年度は,初めにこの検討を行う.併せて,航空機の高揚力装置等の複雑な形状周りでも格子が確実に自動生成できるよう,計算コードの改良も進める. さらに,上記の解析の枠組みを用いて,本研究課題である実際の航空機周りの非定常現象の解析を行う.解析対象は,高揚力装置周りの流れや,航空機の翼上における衝撃波の振動現象等とする.これらの解析を通じて航空機の安全性・環境適合性向上に関する知見を得る.
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