2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J07905
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相馬 尚人 東京大学, 大学院工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 金融政策 / 不確実性 / ロバスト金融政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は自身が行う金融政策の波及メカニズムについて不確実性に直面している中央銀行が取りうる最適な政策を明らかにするモデルを構築し、その帰結について理論的に明らかにした。 具体的には中央銀行が経済モデルのパラメータの真の値を知りえない状況において、その不確実性に結果が大きく左右されないようなロバスト金融政策を理論モデルから導出し、その性質を分析した。ロバスト金融政策の導出方法についてはこれまでにベイジアンとミニマックスという2種類の方法が考えられており、先行研究ではどちらか片方のみを採用して分析を行う傾向があった。しかしながら今年度の研究ではそれら両方の手法を同一の動学的一般均衡モデルに採用し、共通のモデルの下でそれぞれの政策から得られる含意を比較することに重点を置いた。その結果として、それぞれの手法で導出されたロバスト金融政策は先行研究が扱ってきたような単純な構造の不確実性の下では顕著な違いを見せるものの、より複雑な不確実性の下では両者の違いが薄れていくことを明らかにした。それに加え、不確実性の下での最適金融政策のスタンスは、中央銀行にとって不確実なパラメータがモデルの中でどのような役割を果たしているかによって決定的に決まることを明らかにした。 今年度はこれらの結果について日本経済学会秋季大会・DSGEワークショップ・若手経済学者のためのマクロ経済学コンファレンス・金融ジュニアワークショップなど複数の学会で報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、1年目の課題として「パラメータ不確実性の下での最適金融政策の理論的整理」を挙げていた。今年度は実際にこの結果を研究成果として論文にまとめ、複数の学会で報告することができた。現在はそれらの学会報告で得られたアドバイスやコメントを元に論文を洗練させ、ジャーナル投稿への準備を行っている。したがって本年度の研究計画については期待通りに遂行されたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度はある程度の分析が終了した「パラメータ不確実性の下での最適金融政策の分析」について、昨年度の学会報告で得られたアドバイスやコメントを元に論文を洗練させ、査読付き学術誌への投稿を行う。 同時に、これまで捨象してきた名目利子率のゼロ金利下限を明示的に取り入れつつ不確実性の下での金融政策を分析できるモデルの開発を進める。そのために非線形な動学的マクロモデルの解の導出・パラメータの推定手法の習得を進める。
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Research Products
(5 results)