2017 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J07905
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
相馬 尚人 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 金融政策 / 不確実性 / ロバスト金融政策 / 非伝統的金融政策 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は前年度に引き続き、金融政策の波及メカニズムについて不確実性に直面している中央銀行が取りうる最適な政策を明らかにするモデルを構築し、その帰結について理論的に明らかにした。前年度の学会報告で得られたアドバイス・コメントを基に論文改訂作業を進めた。 また、本年度の新たな取り組みとして、日本銀行が2013年に導入した量的・質的金融緩和政策の成果について実証分析を行った。具体的には、日本のエコノミストがGDPやインフレ率など主要マクロ経済指標の将来予測値を答えているサーベイデータに計量経済学的手法を応用することで、上記の政策が民間の経済主体のインフレ期待をどの程度押し上げることができていたのかを分析した。結果として、量的・質的金融緩和政策は経済主体が持つ長期のインフレ期待を上昇させるという当初想定されていた効果を確かに上げており、その値は1%ほど上昇していたことが明らかになった。その一方で、最も大きな政策効果が見られたQQE導入直後においても長期インフレ期待は目標値である2%に届いておらず、かつその効果が近年減衰し始めていることも確認された。現在はこれらの成果を論文にまとめ、ジャーナル投稿への準備を行っている。 前年度までの研究は理論分析が中心で、かつ分析対象は伝統的金融政策のみに限定されていた。本年度は対象を量的・質的金融緩和政策を含む非伝統的金融政策にまで広げることができ、さらに分析手法としてデータを用いた実証分析を取り入れた。来年度は、前年度までの理論分析と本年度の実証分析で得られた知見を活用し、研究の最終目標である不確実性の下での非伝統的金融政策の理論分析を推し進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、課題である不確実性の下での金融政策について、前年度の学会報告で得られたアドバイス・コメントを基に論文改訂作業を進めた。また、新たな取り組みとして前年度から分析対象をさらに広げ、非伝統的金融政策の導入による予想インフレ率引き上げの効果について実証分析を行った。現在はこれらの成果を論文にまとめ、ジャーナル投稿への準備を行っている。したがって本年度の研究計画については期待通りに遂行されたと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は、前年度までの理論分析と本年度の実証分析で得られた成果を活用し、研究の最終目標である不確実性の下での非伝統的金融政策の理論分析を推し進める。具体的には、名目利子率誘導などの伝統的な政策手段の使用が制限され、量的・質的緩和やインフレ・ターゲティングなど非伝統的な政策手段に頼らざるを得ない状況において、中央銀行が直面する不確実性をモデル化し、そのような不確実性の下での最適金融政策の理論分析を行う予定である。
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Research Products
(2 results)