2016 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
16J07994
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
鈴木 弘嗣 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 強塩基触媒 / 不斉反応 / 炭素-炭素結合生成 / 強塩基性中間体 / 低酸性求核剤 |
Outline of Annual Research Achievements |
私は本課題において強塩基性反応中間体を活用し、低酸性求核剤前駆体を用いた直截的触媒反応の開発を行った。本年は、これまでに研究を行ってきたKHMDSと不斉配位子であるビナフト-34-クラウン-10の触媒系を活用することにより、低酸性化合物であるアルカンスルホンアミドを用いた触媒的不斉反応を達成している。本反応は、医薬品等含まれる重要な骨格であるスルホンアミド部位を容易に不斉中心を形成しつつ、導入することのできる非常に重要な反応である。 また、新たな低酸性求核剤前駆体としてアルキルアザアレーンに着目した。アザアレーン部位はアルカロイド等の天然物や医薬品に広く含まれる非常に重要な骨格で、これを簡便に導入する方法は強く求められている。また、私どもがこれまでに開発してきた触媒系では円滑な反応のためにエノラートまたはその類似構造を必要としていたが、アルキルアザアレーンではそのようなエノラートを形成することが出来ないため、我々の触媒系における新たな展開となる。アルキルアザアレーンを用いた触媒的反応の開発では、触媒としてKHMDSと単純クラウンエーテルである18-クラウン-6を用いることで様々なアルキルアザアレーンを求核剤として用いることが出来た。この反応で得られた化合物を酸性条件下で処理することにより、医薬品の候補化合物へ容易に誘導することが出来る。また配位子であるクラウンエーテルを大環状不斉クラウンエーテルへ変えることにより、より有用な不斉反応へ展開することが出来た。 最後に、更に低酸性な求核剤であるアルキルアレーンを用いた触媒的反応の開発を行った。この反応においては、これまでに用いてきたKHMDSでは反応が進行しないため、新たな触媒系として混合塩基系に着目した。この混合塩基系を用い、また求電子剤の構造を調整することにより非常に難しいアルキルアレーンの触媒的反応を達成している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、アルキルアザアレーンを用いた触媒的反応の開発、及びにアルキルアレーンを用いた触媒的反応の開発を目的としていた。実際にはアルキルアザアレーンの他にアルカンスルホンアミド等の低酸性求核剤を用いた反応の可能性を示すことが出来た。また、アルキルアレーンを用いた反応においては当初の計画では、これまでに開発してきたKHMDSとクラウンエーテルの触媒系を改良することにより、反応の達成を目指していたが、検討の途中において混合塩基系を用いることにより更に効率的に且つ、温和な条件で反応が進行することを見出した。また、今回新たに発見した混合塩基系では、アルキルアレーンだけでなく他の非常に酸性度の低い求核剤へ展開できる可能性を秘めており、本課題の鍵である低酸性求核剤を用いた触媒的反応において大きく飛躍することが期待される。これらの事由から私は当初の計画以上に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今回発見した混合塩基系は他の低酸性求核剤前駆体に幅広く適用できる可能性を秘めているため、これまでに開発されてきた塩基触媒系では非常に難しいと考えられていた基質への適用が可能と考えられる。そのため、アルキルアレーンの他、アリル位水素やほかの超低酸性基質を求核剤とする触媒的反応の開発を試みる。また、この混合塩基系の触媒として能力は現在のところ開発の余地が多く残されており、未知数であるため、例えば不斉配位子と混合塩基系を用いた不斉反応への展開等も考えている。この混合塩基系の触媒としての能力を最大限に活かし、単純な塩基触媒反応でない新たな反応への応用や既存の開発されてきた触媒系と違う特徴の発見のために、混合塩基系の構造やその物性等の検討も行う予定である。
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