2017 Fiscal Year Annual Research Report
膜表面型プロテオグリカンの遊離を介した新規骨格筋再生機構の解明
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16J08006
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
竹内 志帆 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 骨格筋 / 間葉系前駆細胞 / プロテオグリカン / 脂肪分化 / 線維芽細胞分化 / 可塑性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本課題は、筋再生時の遊離型コンドロイチン硫酸プロテオグリカン4(CSPG4)が担う機能の解明を試みるものである。本課題で遊離型CSPG4の産生源として位置付けているラット骨格筋間葉系前駆細胞(MPC)のモデルである2G11細胞は、bFGF依存性の脂肪分化能とTGFβ誘導性の線維芽細胞分化能を併せ持つ。これまでに、未分化MPCによって骨格筋の再生が促進される一方で、分化後の線維芽細胞によって細胞外マトリクスが過剰に産生されると、筋分化が抑制されることが判明している。遊離型CSPG4が筋再生に対し機能を有するならば、MPC系譜細胞の分化に伴いその産生動態が変化する可能性が考えられる。この可能性を検討する上では、MPCおよびそこから分化した線維芽細胞の特性理解が重要である。そこで、本年度は、MPCから分化した線維芽細胞の分化特性を調べた。 2G11細胞をTGFβ処理することで誘導した線維芽細胞をbFGF存在下で培養すると、線維芽細胞マーカーであるαSMAの発現が低下した。また、この細胞では脂肪分化能が回復していた。同様の現象は、低密度で培養した線維芽細胞でもみられた。以上の結果から、MPC由来の線維芽細胞はbFGF存在下や低密度といった環境では、MPCに脱分化する可能性が考えられた。 以上の成果は、筋再生を制御するMPCと線維芽細胞がその分化状態を双方向に変化させることを示すものである。CSPG4の遺伝子発現量は、線維芽細胞分化に伴って上昇するが、遊離型CSPG4の産生も同様に変化するとは限らない。今後、遊離型CSPG4の産生源となるMPC系譜細胞の同定およびその動態を明らかにするとともに、骨格筋の損傷・再生がみられるジストロフィン遺伝子変異ラットにCSPG4欠損を導入し、その病態変化を調べる予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、MPCから分化後の線維芽細胞の分化特性に着目し、研究を実施した。その結果、bFGFの添加や低密度での培養によって、線維芽細胞が再びMPCに脱分化する可能性を示す知見を得ることができた。この知見によって、MPCから線維芽細胞への分化という一方向からだけでなく、線維芽細胞からMPCへの脱分化という別方向からMPCの可塑性を捉えることが可能となったのは、当初の予想を上回る成果であった。筋ジストロフィーなどの筋原性疾患の病態では、未分化MPCや線維芽細胞だけでなく両者の中間にあたる細胞も存在すると考えられ、これらの細胞の存在割合は病期によって大きく変動する。CSPG4の遺伝子発現は線維芽細胞分化に伴って上昇するが、遊離型CSPG4の産生もこれと同調して変動するとは限らない。したがって、遊離型CSPG4の産生源となるMPC系譜細胞の同定だけでなく、分化に伴う産生量変化という新たな視点を加えることが、骨格筋再生時の遊離型CSPG4の機能を明らかにする上で必要である。 また、本課題では、CSPG4欠損を導入したジストロフィン遺伝子変異ラットの骨格筋の損傷・再生に与える影響を調べることで、遊離型CSPG4の機能を解明することを計画している。現在までに、CSPG4欠損ラットを作出し、ジストロフィン遺伝子変異ラットとの掛け合わせを開始している。 以上の状況を踏まえて、本課題の進捗状況を概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究より、bFGFの添加や低密度での培養によって、MPCから分化した線維芽細胞が再びMPCへと脱分化する可能性を示す新たな知見を得ることができた。この細胞の性質をより詳細に調べるため、未分化MPC-MPC由来線維芽細胞-線維芽細胞から脱分化したMPC間でRNAシークエンスにより遺伝子発現プロファイルの比較を行う。同時に、これらの細胞間で遊離型CSPG4産生量を比較し、最も産生量の多かった細胞種の遺伝子プロファイルに基づき、遊離型CSPG4産生機序の解明を試みる。 これまでに、CSPG4欠損ラットを作出するとともに、ジストロフィン遺伝子変異ラットとの掛け合わせを開始している。両遺伝子に変異をもつ個体が得られ次第、CSPG4欠損がジストロフィン遺伝子変異ラット骨格筋の損傷・再生に与える影響を調べる予定である。
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Research Products
(3 results)