2016 Fiscal Year Annual Research Report
多様性指向型タンパク質化学合成法の開拓を基盤とする新規リソソーム病治療薬の創製
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16J08106
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
中村 太寛 徳島大学, 大学院薬科学教育部, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | GM2活性化タンパク質 (GM2AP) / ループ構造領域 / 短鎖フラグメント / Pro-Cys間でのNCL反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ライブラリー構築に適したGM2活性化タンパク質 (GM2AP) 誘導体の第二世代化学合成法の確立と、本合成法を用いた高機能型GM2AP誘導体の創製を目的とした。申請書で示した通り、申請者はGM2AP欠損型リソソーム病に対する実用的タンパク質補充製剤の開発に合成化学的手法をもって臨むこととした。現在までに、基盤技術となるGM2AP誘導体の完全化学合成法 (第一世代化学合成法) の確立および本合成法を用いた各種誘導体合成に成功し、さらにそれら全誘導体が生物活性を有することも併せて見出している。続いて申請者は次の創薬展開として、これら合成品の更なる高機能化を目指すこととした。そこで、本タンパク質配列中に存在するループ構造領域を種々アミノ酸に置換したライブラリーを構築することとした。しかし、上記で確立した合成法では、本領域が調製に多段階を要する長鎖ペプチド鎖であるフラグメント2 (Fr. 2) のC末端領域に含まれているため、ループ構造領域への多様性の付与には煩雑な操作が要求されることが予想された。そこで申請者は、この課題を解決しうる新しい合成法 (第二世代化学合成法) の確立を目指すこととした。 申請者は現在までに、タンパク質化学合成におけるPro-Cys間でのNCL反応について、その有用性を示すことに成功している。これにより、申請者が考案したFr. 2のFr. 2NとFr. 2Cへの分割が理論上可能となる。そこで今年度は、申請書に示したループ構造領域多様性指向型の合成戦略に従い、実際にGM2AP誘導体が合成可能であるかどうかを検討することとした。その結果、GM2AP誘導体の完全化学合成を達成し、本合成法の有用性を示すことに成功した。さらに天然型に加え、ループ構造領域を各種アミノ酸に置換した誘導体を4種合成し、それら全誘導体が生物活性を有することも併せて見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、平成28年度はライブラリー構築に適したGM2活性化タンパク質 (GM2AP) 誘導体の第二世代化学合成法の確立に成功した。申請者は、フラグメント2 (Fr. 2) 中に存在する67残基目のプロリン (Pro) と68残基目のシステイン (Cys) との間でペプチド鎖を新たに分割し、新たにFr. 2NおよびFr. 2Cとすることで、ループ構造領域への容易な多様性の付与が可能になると考え、申請書で示した合成計画を立てた。続いて、本合成法に基づき、実際に各ペプチドフラグメントを順次縮合した後、フォールディング操作を行いGM2AP誘導体が合成可能であるかどうかを検討した。まず、N末端側フラグメント (Fr. 1-2N) を、Cysの側鎖チオール基を保護したFr. 1とFr. 2NのNCL反応を行った後、縮合部位のCys側鎖への単糖ユニットの導入と続くチオール上保護基の除去により合成した。続いて、C末端側フラグメント (Fr. 3-4-5) を、従来法と同様の手法でFr. 3~5を用い調製した。最後に、得られた二つの末端側フラグメントと多様性を付与するFr. 2Cを、過去に申請者が開発したPro-Cys間でのNCL反応に付すことで目的のGM2AP誘導体の完全化学合成を達成した。さらに天然型のGM2APに加え、ループ構造領域を各種アミノ酸に置換した誘導体を4種合成し、それら全誘導体が生物活性を有することも併せて見出した。これらの研究実施状況より、平成28年度の研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に確立した第二世代化学合成法を基盤に、GM2活性化タンパク質 (GM2AP) のタンパク質ライブラリーを構築し、高機能型GM2AP誘導体の創出を引き続き目指す計画である。また、GM2APはリソソーム内に存在するタンパク質であるため、その合成品を実用的な補充製剤として臨床応用するためには、それら合成品のリソソーム移行性を向上させる必要がある。そこで、平成29年度は医薬品への応用展開を考慮し、GM2APへのリソソーム移行性の付与を行う計画である。Overkleeftらは薬物へのマンノ-ス-6-リン酸の導入により、薬剤のリソソーム移行性の向上に成功している。そこで申請者は、マンノース-6-リン酸修飾型GM2AP誘導体の創製を行い、細胞における活性の評価、続いて疾患モデルマウスへの投与実験を行い、本合成品の医薬品としての有用性を検証する予定である。
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