2016 Fiscal Year Annual Research Report
新規の光感受性タンパク質を利用した神経回路形成メカニズムの解明
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16J08137
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
周 至文 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | cyclic AMP / グリア / 光遺伝学 / アストロサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は細胞内シグナル伝達を操作できる新規の光遺伝学手法を用い、脳のメカニズムを解明することを目的としている。 本研究ではまず、細胞内シグナル分子の1種であるcAMPを操作するための新規光感受性タンパク質である光活性化アデニル酸シクラーゼ(PAC)を発現する遺伝子改変マウスを作成し、脳における発現部位、発現細胞種を確認した。結果として、脳内の3種類の主細胞であるアストロサイト、マイクログリアおよび神経細胞それぞれにPACを発現させることに成功した。 次に、PACの機能を検証するために、PAC発現細胞に光刺激を与え、細胞内の応答を観察した。本研究では:1、培養細胞におけるcAMPの直接定量;2、培養細胞にcAMPセンサーを発現させ、イメージング法により光刺激によるcAMPの動的変化の観察;3、生きている動物脳に光刺激を与え、cAMPの下流シグナル分子の染色と言った3つの実験系において光刺激によるcAMPの上昇を確認した。これらの結果は、光刺激がin vitro / in vivo両方においてcAMPを上昇させることが可能であること、その上昇は迅速であること、そして下流シグナルを稼働できることを示した。つまり、これらの遺伝子改変マウスを利用することは、狙った脳領域において光によって高い時間分解能でcAMPを上昇させ、研究対象となる細胞腫のみで生化学的なモジュレーションができる画期的な新技術と言える。 実際、この新技術を利用し、学習時光によるアストロサイトのcAMP上昇が記憶形成にどのような影響を与えるかを調べた。記憶形成時アストロサイトにおけるcAMP上昇が、記憶の維持を促進したことを発見した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1、申請研究で使用する遺伝子改変マウスを期待通りに作製し、神経細胞のみならず、各細胞種にPACを発現させることができた。 2、光遺伝学を利用するために、光刺激をin vitroとin vivoで与える系を新しく構築し、これらによるcAMP上昇の評価を可能にした。 3、in vivoで細胞内cAMPを上昇させた場合、フェノタイプが観察された。
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Strategy for Future Research Activity |
in vivoで光刺激によるcAMPの上昇を行い、健常マウスの行動や学習に与える影響を検証する。また、損傷モデルにおいて光刺激によるcAMP上昇が免疫担当細胞であるマイクログリアとアストロサイト、そして損傷を受けた神経細胞に与える影響を調べ、損傷によるフェノタイプをレスキューする可能性を検討する。
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[Journal Article] Structural insight into photoactivation of an adenylate cyclase from a photosynthetic cyanobacterium2016
Author(s)
Mio Ohkia, Kanako Sugiyama, Fumihiro Kawai, Hitomi Tanaka, Yuuki Nihei, Satoru Unzai, Masumi Takebe, Shigeru Matsunaga, Shin-ichi Adachi, Naoya Shibayama, Zhiwen Zhou, Ryuta Koyama, Yuji Ikegaya, Tetsuo Takahashi, Jeremy R. H. Tame, Mineo Iseki, and Sam-Yong Park
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Journal Title
Proceedings of the National Academy of Sciences
Volume: vol. 113 no. 24
Pages: 6659-6664
DOI
Peer Reviewed / Acknowledgement Compliant
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