2017 Fiscal Year Annual Research Report
SiCバイポーラトランジスタの表面・界面キャリア再結合過程の解明に基づく高性能化
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16J08202
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅田 聡志 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | フォトルミネセンス / SiCバイポーラトランジスタ / 設計指針の提示 / 伝導度変調効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
SiCバイポーラトランジスタ(BJT)の高性能化にむけて、p型SiCの物性評価に着手した。申請者は、過去にp型SiCのホール効果測定の研究を行っていたが、その際に得られた知見にもとづき、p型SiCのフォトルミネセンス(PL)測定の発光スペクトルを解析した。その結果、p型SiCのアルミニウム(Al)ドーピング密度と、励起子発光強度の関係性を明らかにした。本研究により得られた知見は、p型SiCのドーピング密度の非破壊評価を可能にし、SiC BJTのベース層の設計に有用である。さらに、本研究のみならず、p型SiCのドーピング密度のウェハマッピングなど、工業的にも活用可能な知見となる。 SiCバイポーラトランジスタは、伝導度変調による低オン抵抗(低損失)動作が理論上は可能であるにも関わらず、明確な伝導度変調は確認されていない。それどころか、オン抵抗は、設計したデバイス構造から予想される値よりも大きくなる。そこで本研究では、SiC BJTのオン抵抗が大きくなる要因について実験とシミュレーションにより考察した。 SiC BJTの寄生ダイオードを考慮した等価回路モデルを提案することで、オン抵抗が増大する理由を定量的に明らかにした。この知見に基づき、SiC BJTの伝導度変調動作を実現するうえで、満たすべき設計条件を示した。 SiC BJTは通常、電流密度を大きくするため、マルチフィンガー型で用いる。しかし、これまでマルチフィンガーのフィンガー本数がオン特性に与える影響は明らかにされていなかった。そこで本研究では、フィンガー本数が伝導度変調に与える影響についてシミュレーションを用いて調べた。その結果フィンガー本数が少ない方が、伝導度変調領域の拡張によりオン特性がよくなる場合があることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高性能SiC バイポーラトランジスタ(BJT)を実現するための、デバイス設計条件を明らかにできた。この知見は、最低限満たすべき条件であるが、この条件が満たされていなかったことにより、これまでのSiC BJTのオン特性は制限されていた。この知見に基づき、SiC BJTを作製することで、伝導度変調による低オン抵抗動作が実現できると期待できる。また、シミュレーションによるマルチフィンガーBJTに関する研究は、実用上重要な知見であり、高性能SiC BJTが実現できた暁には有用となる。以上の状況をかんがみると、SiC BJTに関する研究は大きく前進しており、概ね順調と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた知見をもとに、実際に高性能10kV級SiC BJTの実現を目指す。具体的には、増幅率の向上と伝導度変調動作の実現を目指す。増幅率向上に向けて、再結合電流を低減する必要がある。そこで、再結合電流低減のためのパッシベーション方法をpnダイオードを用いて行う予定である。また同時に、再結合電流モデル化(SRHモデルの再検討)も行う予定である。
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Research Products
(11 results)