2016 Fiscal Year Annual Research Report
銀ナノキューブの光捕集構造を利用した光電気化学過程の高機能化
Project/Area Number |
16J08206
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
齋藤 滉一郎 東京大学, 生産技術研究所, 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 銀ナノキューブ / 局在表面プラズモン共鳴 / プラズモン誘起電荷分離 / 酸化チタン / 部位選択的酸化反応 / ナノフォトニクス / 非対称散乱挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、プラズモン誘起電荷分離と呼ばれる、半導体上の金属ナノ粒子から半導体側へ電子が移動する現象の高機能化を目的としている。プラズモン誘起電荷分離は金属ナノ粒子のプラズモン共鳴が強い部位において優先的に進行するため、銀ナノキューブと金属薄膜との間に生じるプラズモンカップリングを利用し、その光電気化学過程の高効率化を目指した。当初、金薄膜上に酸化チタンを製膜し、銀ナノキューブを担持した構造を用いる予定であったが、系が複雑であることから、準備段階として単純な系を用いて検討を行うことにした。酸化チタン上の銀ナノ粒子はプラズモン誘起電荷分離により銀イオンへと酸化溶解する性質があるため、銀ナノキューブの溶解挙動について検討することで、電荷分離挙動に関する知見を得ることを目的とした。 酸化チタン上の銀ナノキューブが示す2つのプラズモン共鳴モードを光照射によりそれぞれ選択的に励起することで、キューブの上側または底面側を選択的に酸化溶解させられることを示した。本結果は、励起波長に応じて部位選択的にプラズモン誘起電荷分離が進行しうることを示しており、重要な知見と考えられる。また、酸化チタン上の銀ナノキューブは、光を当てる方向に応じて異なる色の光散乱を示すことを見出しており、部位選択的な酸化溶解を利用することで片方の色のみを選択的に変化させることを試みた。その結果、半透明でありながら基板の片側からのみ観測できる散乱色の変化も達成した。さらに、上記の非対称な散乱挙動に関連して、銀ナノキューブ以外の複数種の粒子を用いて散乱色の自由度を向上させる手法も考案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、プラズモン誘起電荷分離による銀ナノキューブの酸化溶解挙動をについて検討し、機構に関する基礎的な知見を得ることを目的とした。当初の予定であった、金属薄膜と銀ナノキューブのプラズモンカップリングの利用については、構造作製の試行中でありやや遅れているものの、銀ナノキューブの部位選択的酸化が可能であるという重要な知見が得られた。これを利用した応用も期待通り進展し、成果はそれぞれ査読付英文学術雑誌に掲載されたことも踏まえれば、本研究はおおむね順調に進展したと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に基づき、金薄膜と銀ナノキューブのプラズモンカップリングを利用したプラズモン誘起電荷分離に関する検討を行うが、キューブに異方性を持たせた銀ナノ直方体も用いることを予定している。直方体は長軸と短軸それぞれに平行な偏光により異なる共鳴を示すため、それらがカップリングとプラズモン誘起電荷分離効率に及ぼす影響についても検討していく。
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Research Products
(6 results)