2016 Fiscal Year Annual Research Report
結合解離エネルギーの調節による求電子種生成に関する制御法の開拓
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16J08260
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澄田 明成 東京大学, 大学院薬学系研究科(薬学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | 超強酸 / サリチル酸メチル / 求電子種 / 芳香族求電子置換反応 / リン酸エステル / 結合切断 |
Outline of Annual Research Achievements |
芳香族求電子置換反応は、古くから研究されており、現在でも信頼性が高い有機化学反応である。しかしながら、求電子種の生成には、高い反応エネルギーを要するため、激しい反応条件が求められる。 そのため、一つの反応で発生できる求電子種の種類や数に制限がかかり、また反応の化学選択制に乏しいなど、求電子置換反応に関する課題点が未だに残されたままであり、単純でない化合物の合成には不向きのように思われる。 そこで、申請者はこれらの課題点を求電子種生成速度を制御することにより解決することが可能と考え、求電子種生成速度を、脱離基により調節する手法の開発を行ったので、下記に記す。 1)脱離基としてサリチル酸メチル誘導体を用い、電子密度を変化させることにより生成速度を調節:サリチル酸メチル誘導体を組み入れたカルバメート及びエステルを用いることで、最大3種類の求電子種を逐次的に生成することが可能となった。そのため、芳香族アミド及び芳香族ケトンを骨格に有する単純でない化合物の短工程合成の可能性を示した。 2)サリチル酸メチルを脱離基として組み入れたリン酸トリエステルを用いたカルボン酸からの芳香族ケトン合成:サリチル酸メチルを組み入れることによりリン酸エステルからリンカチオン種を生成させるが出来る。生成したリンカチオン種は、カルボン酸をリン酸化することが可能である。系中でカルボキシ基をリン酸化することで、良い脱離基であるアシルホスフェイトに変換する本手法は、反応に要する反応エネルギーを低下させることにより、求電子置換反応を、化学選択制を有する反応へと変換させることができた。そのため、求電子置換反応では合成が困難なため、従来多段階の反応が必要であった、種々のジアゼピン骨格など、単純でない化合物の短工程合成の可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度では、リン酸トリエステルを用いた芳香族ケトン合成法の検討を行う予定であったが、反応の基質一般性のみならず、反応解析に重要な鍵中間体であるアシルホスフェイトの存在の間接的証明や、計算化学を用いた反応機構解析など、次年度で行う予定の研究内容もある程度実施できたため、上記の評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
サリチル酸メチルを組み入れたリン酸トリエステルを用いた反応では、αアミノ酸やピコリン酸など、未だ反応に不向きな基質が存在する。その理由を、1)本反応機構を解明することにより、反応が進行しない理由を突き止め、2)その理由を解決するために、様々な条件を検討することにより達成を試みたいと思う。 また、リン酸トリエステルは酸中で活性化されて求電子性リン酸エステルとなるが、カルボン酸以外の官能基とも反応する可能性があると考えられる。そのため、カルボキシ基以外の官能基でもリン酸化されるかどうかを検討していく予定である。
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