2016 Fiscal Year Annual Research Report
バイオプリンティング再生医療に応用可能な新規in situ架橋ゲルの開発
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16J08368
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中川 慶之 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特別研究員(DC2)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / イオン架橋性ゲル / バイオプリンティング / 再生医療 / バイオマテリアル / 刺激応答性ゲル / スターブロックコポリマー / インクジェットプリンター |
Outline of Annual Research Achievements |
3Dプリンターにより細胞とゲルからなる生体組織様構造を作製するバイオプリンティングが近年注目され、この用途に適したゲル材料の開発が求められている。本研究では、金属イオンの添加により瞬時にゾル-ゲル転移を示すイオン架橋性ゲルに着目し、自在な分子設計が可能な合成高分子のみからなる新規イオン架橋性ゲルの開発を通じてバイオプリンティングに適した革新的なゲル材料の実現を目指している。 本年度は、過去の検討において開発したカルシウムイオン(Ca2+)架橋スターブロックコポリマーゲルの高性能化を図り、酸化還元応答性鉄イオン架橋スターブロックコポリマーゲルの開発に取り組んだ。また、この新規イオン架橋性ゲルを用いたインクジェットバイオプリンティングの検討にも取り組んだ。 まず、過去の検討で使用したCa2+と比較して、強固な架橋点構造が期待され、酸化還元応答性の付与が期待される鉄(III)イオン(Fe3+)を使用し、イオン架橋性スターブロックコポリマーゲルの作製を検討した。その結果、外部刺激による酸化・還元を用いて任意のタイミングでゲル化・ゾル化可能で、より生体内安定性の高いイオン架橋性スターブロックコポリマーゲルを開発できた。 また、上述のイオン架橋性スターブロックコポリマーゲルを用いて、インクジェットプリンターによる3次元ゲル構造物の作製を検討した。その結果、Fe3+をはじめ種々の金属イオンを架橋イオンとして用いることにより、設計どおりのゲル構造物が得られた。これにより本材料が3Dプリンティング可能な材料であり、バイオプリンティングに応用可能であると示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前駆体高分子の分子構造に着目して合成高分子イオン架橋性ゲルの高機能化を実現するという当初の計画は達成できなかったものの、架橋イオンの変更という別アプローチにより合成高分子イオン架橋性ゲルの高機能化が実現した。また、インクジェットプリンターを用いたバイオプリンティングプロセスの検討については、当初の計画より1年前倒しで取り組み始めることができた。以上より、本研究はおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、前駆体高分子の分子構造に着目してより高性能な合成高分子イオン架橋性ゲルの開発に改めて取り組む。現在までの検討により、新たな分子構造の合成高分子イオン架橋性ゲルを得ることに成功している。この材料を詳細に検討していく中で、さらなる機能・物性の向上を実現するための分子設計の指針となる知見の獲得を目指していく。さらに、バイオプリンティングプロセスについてもさらなる検討を進め、解像度等を向上させるための材料の設計指針となる知見の獲得も目指していく予定である。
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