2017 Fiscal Year Annual Research Report
リードスルー作用に着目した新規高活性ネガマイシン誘導体の創製とその作用機構の解明
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16J08454
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Research Institution | Tokyo University of Pharmacy and Life Science |
Principal Investigator |
濱田 圭佑 東京薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ネガマイシン / リードスルー / ナンセンス変異 / 遺伝病 / 筋ジストロフィー |
Outline of Annual Research Achievements |
デュシェンヌ型筋ジストロフィーをはじめとする各種遺伝性疾患の約10~20%はナンセンス変異(中途終止コドン、premature termination codon ; PTC)に起因する。近年その治療法として、当該ナンセンス変異にて生じたmRNA 上のPTCを、リボソームにおけるタンパク質合成の過程で読み飛ばし(リードスルー)することで、機能を有するタンパク質を発現させる方法が提唱されており、ナンセンス変異疾患克服の一手段として注目を集めている。1970 年に放線菌(Streptomyces purpeofuscus)から単離同定されたジペプチド様抗生物質 (+)-ネガマイシン(1)も、リードスルー活性を有すると報告された化合物の一つである。これまで我々は1をリード化合物とし、高活性誘導体の獲得を目指して構造活性相関研究を展開してきた。しかしながら、高活性誘導体の獲得に必要不可欠な、ネガマイシン類のリードスルー活性発現に関与する標的分子・結合部位は未だ明らかとなっておらず、活性の発現メカニズムも十分に解明されていないのが現状である。そこで今回、ネガマイシン誘導体の作用機構解析を目的として、出芽酵母 Saccharomyces cerevisiae を用いた遺伝学的解析研究を実施した。 本年度は、昨年度に構築したナンセンス変異含有酵母株(リードスルー活性の定性が可能な酵母株)を用い、遺伝学的解析に着手した。すなわち、本酵母株を用い、ネガマイシン誘導体に対するリードスルー耐性変異株を単離したのち、ゲノムシーケンスにて変異箇所の同定を行った。変異の挿入が確認された遺伝子の中には、ネガマイシン誘導体の細胞内導入に関与するトランスポーター、及びその発現制御を担う一連の酵素群をコードするものも含まれており、実際にそれら遺伝子を破壊すると、誘導体の細胞内導入が妨げられることを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度計画書に記載している、TCP-112にビオチン標識及び光親和性標識を導入した誘導体の合成に着手し、各構造を有する誘導体の獲得に成功した。これら誘導体は、in vitro培養細胞評価系において、TCP-112には劣るものの、(+)-negamycinと比較して有意なリードスルー活性を有することが明らかとなった。そこで分子標的解析研究への足がかりとしてビオチン標識誘導体を用い、HeLa細胞の細胞抽出液に対するプルダウンアッセイを実施した。しかしながら、ネガマイシン誘導体処理群とリンカーコントロールとの間で顕著な差は確認できず、真の標的と思われる分子情報を獲得することはできなかった。 一方、昨年度に引き続き、ネガマイシンの生体内結合部位及びその活性発現機構の解析を目的として、出芽酵母をモデル生物とする遺伝学的解析研究を展開した。まず、平成28年度に構築したナンセンス変異含有酵母株(リードスルー活性の定性が可能な酵母株)を用い、ネガマイシン耐性株の取得を試みた。その結果、30株のネガマイシン耐性株の単離に成功した。続けて、これら30株のゲノムシーケンスを実施し、変異遺伝子箇所の同定を行った結果、27個の遺伝子に1アミノ酸変異を含む種々の変異が挿入されていることを確認できた。それら遺伝子の中には、ネガマイシンの細胞内導入に関与するトランスポーターをコードする遺伝子も含まれており、実際にその遺伝子を破壊すると、ネガマイシン誘導体の細胞内導入が妨げられることも確認できた。さらに、このトランスポーターにて認識されることが報告されている化合物との競合アッセイを実施したところ、ネガマイシン誘導体の細胞内導入量が減少し、リードスルー活性が減弱することも確認できた。すなわち、ネガマイシン誘導体は、その細胞内移行方法の一つとして本トランスポーターを利用していることが示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に実施した、ビオチン標識ネガマイシン誘導体を用いるプルダウンアッセイでは、目的とするネガマイシン誘導体の標的分子、ならびに作用機構解明に繋がる分子情報を獲得することは出来なかった。これは、誘導体と標的分子との結合親和性が低いこと、もしくは標的分子のタンパク質濃度が検出限界以下であったこと等が原因であると考えられる。そこで今後、ビオチン標識体と共に合成した、光親和性官能基であるベンゾフェノン構造を導入した誘導体を用い、光照射を行うことで誘導体と標的分子間の共有結合を形成後、同様のプルダウンアッセイを行うことで、再度分子標的の同定を試みる。さらに昨年度計画と同様、光反応性官能基に加えクリックケミストリーを適用可能なアルキン構造を導入した誘導体の合成を行う。合成した化学プローブは培養細胞を用いたin vitro評価系及び無細胞タンパク質合成評価系にてリードスルー活性を評価し、有望なものについては、同様のプルダウンアッセイに付すことで標的分子の同定を試みる。 また、ナンセンス変異酵母株を用いる遺伝学的解析研究においては、本年度に実施したゲノムシーケンスにて見出された変異遺伝子各々に対する詳細な検討を引き続き実施することで、間接的にネガマイシン誘導体の標的分子・リードスルー活性発現機構に重要な因子の探索を行う。
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Research Products
(7 results)