2016 Fiscal Year Annual Research Report
酵素の工業利用のためにATP依存性のリン酸化酵素をピロリン酸依存性に改良する方法
Project/Area Number |
16J08482
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
永田 隆平 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2018-03-31
|
Keywords | X線結晶構造解析 / タンパク質工学 / キナーゼ / ピロリン酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
ほとんどのリン酸化酵素は、ATPから別の分子へのリン酸基転移反応を触媒する。酵素は穏やかな条件で目的産物を純度良くつくるので工業利用されるが、リン酸化酵素ではATPにかかる費用が工業利用の妨げになる。本研究では、ATP依存性のリン酸化酵素を改良し、より安価な化合物であるピロリン酸を利用できるようにすることを目指す。 2016年度は、ピロリン酸依存性リン酸化酵素がピロリン酸を利用できる構造的要因を明らかにするため、我々が同定した新規ピロリン酸依存性イノシトールリン酸化酵素(PPi-IK)のピロリン酸類似体との複合体構造を決定した。この構造からPPi-IKのピロリン酸認識に関わる残基が判明したが、ピロリン酸結合部位の1つのアルギニン残基の側鎖が定まった構造をとっておらず、ピロリン酸認識への関与は不明だった。一方、他の実験で決定した硫酸イオンとの複合体構造では、このアルギニンはピロリン酸類似体と同じ場所に結合した硫酸イオンと相互作用していた。このことから、このアルギニンもピロリン酸認識に関わると思われる。また、このアルギニンが実際の酵素反応に関わることも変異体解析により確かめた。次に、ピロリン酸認識に関わると考えられる残基の保存性を、PPi-IKが属するリボキナーゼファミリーの酵素において調べた。その結果、上記のアルギニンを含む塩基性の3残基がATP依存性酵素では保存されておらず、PPi-IKに特徴的であることが分かった。この3残基は、ATP依存性酵素をPPi依存性へ改良する足がかりになると期待できる。 PPi-IK以外の新規リン酸化酵素についても研究を行い、リン酸化酵素の知見を広げてきた。ADP依存性の遊離セリンリン酸化酵素の構造解析を行い、基質認識や反応触媒機構に関する知見を得た。この内容をまとめた論文は、ACS Chemical Biology誌に受理された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ピロリン酸依存性酵素への変換においては、酵素改良については道半ばであるものの、PPi-IKの基質複合体構造からピロリン酸依存性酵素に特徴的な残基を決定しており、着実に進展している。また、別のADP依存性遊離セリンリン酸化酵素について、結晶構造から得た反応機構などに関する知見をまとめ、ACS Chemical Biology誌に発表することができた。この様な成果から、進捗状況は概ね順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでに、結晶構造から明らかになったPPi-IKに特徴的な3残基を、リボキナーゼファミリーのいくつかのATP依存性酵素へ導入し、ピロリン酸依存性への変換を試みている。しかし、目的の活性を有する変異型酵素は得られていないので、今後はピロリン酸結合部位にさらなる点変異を加えたり、タンパク質のドメインを入れ替えるような大きな改良を加えたりして、ピロリン酸依存性への改良を目指す。
|
Research Products
(5 results)