2016 Fiscal Year Annual Research Report
異方的な静電反発力を内包した、巨大単結晶のようなソフトマテリアル
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16J08492
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐野 航季 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | ハイドロゲル / 複合材料 / 静電反発力 / ナノシート / 液晶 / 磁場配向 / 異方性 / 構造色 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、負に帯電した無機ナノシート間に働く静電反発力を利用することによって、高度に制御された階層的異方構造からなる巨大単結晶のようなソフトマテリアルを設計するとともに、その異方的な静電反発力に起因する破格の物性・機能の開拓を目指す。採用初年度である当該年度は、基盤となる研究である(1)無機ナノシート間に働く静電反発力の最大化に関する知見を深めるとともに、(2)巨大な力学的異方性を有する構造材料の開発を行った。 (1)酸化チタンナノシート水分散液の遠心分離操作を繰り返すことによって、系の余剰イオン濃度が減少した結果、鮮やかな構造色を示すことを見出した。コロイドのDLVO理論によると、余剰イオンが存在することによってコロイド間の静電反発力が遮蔽される。すなわち、遠心分離操作によって系の余剰イオン濃度が減少した結果、ナノシート間に働く静電反発力が増加し、ナノシート間距離が広がったことが示唆された。紫外ー可視スペクトル測定によると、ナノシート間距離は最大で675 nmにまで及ぶことが明らかとなった。DLVO理論計算を行なった結果、得られたポテンシャル曲線の二次極小が実験値と非常に良く一致したことから、上記の長距離秩序構造は実際に静電反発力によって保たれていることが示された。 (2)上記基盤研究においてナノシート間に働く静電反発力を最大化する戦略の確立に成功している。この知見に基づいてナノシート間に働く静電反発力を最大化し、磁場によってナノシートを一方向に並べた後にゲル化を行うことでその配向構造の固定化を達成した。このようにして得られた異方的なソフトマテリアルは、極めて高い力学的異方性を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
系の余剰イオン濃度とナノシート間に働く静電反発力の関係性を明らかにすることで、最大化した静電反発力を内包した異方性ソフトマテリアルの作製に成功している。また、得られた材料の力学物性測定の結果、その力学的異方性は予想をはるかに上回る大きさであり、当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、当該年度の研究成果に基づき、今後の研究を展開していく。具体的には、ソフトマテリアルの力学的異方性を戦略的に高めていくと同時に、巨大な異方性を生かした物性(免震性能など)の測定を行う。また、この知見を生かして酸化チタンナノシートを内包したソフトマテリアルの光学物性やアクチュエーター性を追求していく予定である。
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Research Products
(10 results)