2016 Fiscal Year Annual Research Report
撃力による液体ジェットの制御と高粘度液滴を用いた革新的インクジェット技術の開発
Project/Area Number |
16J08521
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
木山 景仁 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 流体力学 / キャビテーション / 液体ジェット |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度において,主として,低粘性流体中におけるキャビテーション気泡発生メカニズムの解明,に取り組んだ.これは,撃力によって生じる液体ジェットの運動について,液中における気泡挙動が顕著な影響を与えることが示唆されているためである.この気泡発生について理解を深めることは,撃力によるジェットの制御には不可欠な要素である.当該年度は特に,キャビテーション発生条件の解明,キャビテーション発生がジェットに与える影響,について取り組んだ. まず,キャビテーションの発生条件の解明に取り組んだ.これまで,キャビテーション発生条件としては,流れ場の平均速度の自乗を分母に持つ無次元数である,キャビテーション数が知られていた.しかし,従来のキャビテーション数は,本研究が対象とするような,液体急加速(撃力付与)時の気泡発生条件には適用できないと考えられる.そこで本研究では,撃力付与の瞬間における運動量変化に注目し,新たな指標(無次元数)を提案した. 次に,キャビテーション発生がジェットに与える影響について取り組んだ.先述の通り,キャビテーションが発生する場合,液体ジェットの速度が,気泡が発生しない場合と比して最大2倍程度増速することが報告されている.しかし,これまでの研究は高速度撮影結果から考察を与えたものだけであり,実際の圧力変動を実験的に計測した例はなかった.本研究では,そのメカニズム理解のための第一歩として,液中に生じる圧力波をハイドロフォンプローブによって定点計測するとともに,液中での気泡挙動を高速度カメラで捉えることで,両者の関係の解明を試みた.その結果,キャビテーション気泡の発生により,液中圧力場が負圧から急激に回復する様子をはじめて計測した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該年度には,低粘性流体中におけるキャビテーション気泡発生メカニズムの解明,に取り組んだ.そのなかでも特に,キャビテーション発生条件の解明,キャビテーション発生がジェットに与える影響,について取り組んだ. まず,キャビテーション発生条件の解明であるが,高速度撮影を用いて,撃力付与の瞬間における液体容器の運動と,その結果として生じるキャビテーション気泡の運動を捉えることによって,新規に提案した(撃力付与時に適用可能な)理論的なキャビテーション発生条件との比較が可能になった.実験結果は,新規に提案した理論に対し,幅広い実験条件で良好な一致を示した.このことは,撃力付与時におけるキャビテーション発生の傾向を適切に表現できるようになったことを示す.本成果は,査読付き国際学術誌に投稿中である. 次に,キャビテーション発生がジェットに与える影響についてであるが,高速度撮影と水中圧力計測とを組み合わせることによって,キャビテーション挙動が圧力場に与える影響を議論することが可能になった.この実験によって得られた結果は,おおむね,高速度撮影結果のみから推測された結果と整合するものであった.また,個々の気泡の挙動と圧力場との関係が調べられるようになったことは,大きな前進であった.これにより,個々の気泡としてのふるまいと,気泡群としてのふるまいとが液中圧力場,さらにはジェットに与える影響を議論できるようになったことは重要な点である.以上の進展を踏まえた結果は,今後査読付き国際学術誌に投稿する予定である. 以上より,研究は概ね予定通りの進展を見せている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度は,予定していた,低粘性流体中におけるキャビテーション気泡発生メカニズムの解明,に取り組み,一定の成果を得た.次年度は,集束液体ジェット先端からの液滴形成プロセス,について検討を進める. 当該テーマについては,すでに予定を繰り上げて先導実験を行っている.この先導実験の結果から,液滴形成過程においては,表面張力,粘性,(液中に気泡が生じる系では)液中での気泡運動,の3要素の寄与が重要になることが示唆されている.次年度においては,与える撃力の大きさをパラメータとして,これら3要素の影響について実験的なアプローチで解明していく. 当初の予定においては,液体容器に打撃を加えることによって生成されるジェットを利用して,研究を遂行する予定であったが,当該機構の解明が不十分であることや,ジェットへの影響が未知なパラメータが存在することから,本実験においては,より制御が容易なレーザー誘起ジェットを利用する.この場合,レーザー誘起気泡の急拡大によって撃力が生じる,と捉え直す.また,この実験と並行して,打撃によるジェット生成機構についても検討を進める予定である. また,本研究の特徴である集束液体ジェットについて,当初想定していたプリント技術以外に加えて,医工学分野への応用可能性について示唆をいただいた.集束ジェットの運動メカニズムに関する基礎的な理解ばかりでなく,ジェットが衝突する際の現象に関する知見を集積する重要性は,ますます高まっている.次年度においては,当初計画を拡張し,集束ジェットの衝突現象に関する実験も進める予定である.
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