2017 Fiscal Year Annual Research Report
撃力による液体ジェットの制御と高粘度液滴を用いた革新的インクジェット技術の開発
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16J08521
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
木山 景仁 東京農工大学, 大学院工学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 流体力学 / キャビテーション / 液体ジェット |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度は,微小液滴生成とその制御に取り組むことを計画していた.この目的に照らして,まず,マイクロ流路を用いた液体ジェット生成,に取り組んだ.特に,液体ジェットの速度に注目して実験的に調査した.研究を実施するなかで,液体中に生じるキャビテーション気泡がジェットの運動に顕著な影響を与えることが示唆された.そのため,ジェット制御に向けて,キャビテーション制御手法の検討は不可欠であると考え,メゾスケール実験系を用いたキャビテーション気泡の制御性に関する検討を加えて行った. マイクロ流路を用いた実験では,液体にパルスレーザーを照射し,局所的に加熱・気化させることで周囲流体に撃力を付与する手法を用いた.低粘度の液体ジェットでは投入エネルギー量によってジェット速度は記述されると考えられたが,液体中にキャビテーションが発生する場合はジェット速度が最大2倍程度変化した.一方,高粘度のジェットでは,その速度は低粘度ジェットと比して明らかに低下した.またジェットの径も太くなり,水の100倍程度の粘度を有するジェットでは,その先端から液滴を生成することが困難になることが実験的に明らかになった. キャビテーションに関しては,昨年度より進めていたキャビテーション発生条件について,それを普遍的に記述する無次元数を定式化した.加えて,流路内部にごく微小な気泡(マイクロ・ナノサイズ気泡)を導入し,擬似的なキャビテーション発生源とすることを構想し,実験を実施した.その結果,導入した気泡が急拡大することで,液体ジェット速度にキャビテーション発生時と同様の変化が生じることがわかった.この結果は,微小気泡導入によるキャビテーション発生制御の可能性を示唆するものである.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度は,当初計画に沿って微小液滴生成装置の構築とジェット・液滴の制御に取り組んだ.具体的には,マイクロチャネルを利用してマイクロジェット挙動の実験的解析を行った.その結果,マイクロ流路内に微小なキャビテーション気泡が生じることにより,液体ジェットの制御性が著しく低下することを実験的に明らかにした(Hayasaka, Kiyama, et al., Microfluidics and Nanofluidics, 2017).このキャビテーション発生条件については,メゾスケールの実験を行うことで定式化を進めている(Pan, Kiyama, et al., Proceedings of National Academy of Science, 2017).また,流路内に微小な気泡を疑似的なキャビテーション発生源として導入することにより,キャビテーション発生及び液体ジェット速度を制御するための指針を得た(Yukisada, Kiyama, et al., Langmuir, 2018). 加えて,高い粘度のジェット・液滴について検討を進めた.水の100倍程度の粘度を有する液体に関しては,増粘により液体ジェット先端からマイクロ液滴を分離・形成することが困難になるとの結果を得た.また先述のキャビテーションの効果としては,液体ジェットの速度ばかりでなく,その飛翔時の形状に対しても大きな影響を与えることが実験的に明らかになった. 以上のことから,当初想定した課題に対して,概ね順調に研究が進展していると考えられる.加えて,当初想定していなかった,キャビテーションがジェット形状に与える影響なども明らかになっており,今後の研究進展に対する有望な示唆が得られた.
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は,本研究課題の最終年度である.これまで,ジェット・液滴生成法に関して基礎的な研究を中心に進めてきた.平成30年度は,これらの成果を基盤として,液体ジェット・液滴の飛翔時および対象物衝突時の挙動について実験的な解析を進める.すでに,キャビテーションが生じることによって液体ジェットの形状や飛翔角度が不安定になり制御性が低下することが実験的に明らかになってきている.平成30年度は当該事象についてより定量的な調査を進め,ジェット・液滴を効率・再現性良く生成する条件の解明に取り組む.また,すでにジェット・液滴が対象物に衝突する際の実験的解析を進めており,平成30年度において,この研究を一層発展させていく.なお,この課題については,海外の研究者(ユタ州立大学)と連携して進めている,国際共同研究である.上述の取り組みは,マイクロデバイス設計においてその最適化などに寄与すると期待される. また,平成30年度が最終年度であることを鑑み,これまで得られた研究成果をひろく発信するため,雑誌論文・国際会議を利用した対外発表を一層強化する予定である.具体的には,撃力によりジェット形成する際に液体中で生じる圧力波のモデリング,液体中に生じる気泡の運動と圧力の関係,マイクロ液体ジェット・液滴の飛翔・衝突現象,の3件について学術論文として発表すべく,準備を進めている.あわせて,国際会議を積極的に活用し,速報性を確保していく.とくに,気泡運動と圧力との関係は,本研究で対象とする液体ジェット・液滴生成装置ばかりでなく,流体機械全般の安全設計において重要な知見である.すでに査読付き国際会議へ投稿済みであり,今後も継続して成果を発表していく.
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