2016 Fiscal Year Annual Research Report
バイオ3Dプリンタを用いた犬軟骨組織の体外構築と移植による軟骨再生治療効果の検討
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16J08547
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 健太郎 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 再生医療 / 間葉系幹細胞 / 軟骨 / スフェロイド |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、申請者らが新規に培養法を確立した犬間葉系幹細胞である骨髄周囲脂肪細胞周囲細胞(BM-PACs)の効率的な軟骨分化条件について検討した。まず、基礎的な培養条件として、増殖段階での塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)添加の有無および分化誘導時のFBS濃度の観点から評価を行った。増殖段階にbFGFを添加することで増殖能の亢進と、細胞の小型化が認められた。bFGF添加群のspheroidでは無添加群と比較して早期に多量のグリコサミノグリカン(GAG)発現がみられ、I型コラーゲンの発現は抑制された。一方、FBS濃度が低いほどGAGおよびⅡ型コラーゲンの発現が亢進した。また、10%および1%FBS群ではspheroid表層がSafranin O陰性を示したが、0%FBS群ではspheroid全体がSafranin O陽性を示した。以上より、増殖段階におけるbFGF添加とFBS不含軟骨分化培地により、BM-PACsを迅速かつ効率的に軟骨分化させることができた。ここまでの検討で基礎的な軟骨分化条件を確立することが出来たため、続いて硝子軟骨分化を促進させる成長因子の組み合わせを検討し、より生体内の軟骨に近い組織の作製を目指した。これまで軟骨分化培地に添加していたTGF-β1に加えて、軟骨分化促進作用が報告されている成長因子(BMP-2, GDF-5, IGF-1)を培地中に添加し、軟骨誘導試験を行った。BMP-2添加群およびGDF-5添加群では有意にGAG発現が亢進した。qPCRによる遺伝子発現解析を行ったところ、硝子軟骨マーカーであるCOL2/COL1の発現はGDF-5添加群で高い傾向が認められた一方、肥大軟骨マーカーであるCOL10の発現はBMP-2添加群で有意に高値を示した。以上より、GDF-5は硝子軟骨の作製に理想的な成長因子であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで軟骨分化が困難とされてきた犬間葉系幹細胞の軟骨分化能を飛躍的に促進させる培養法を確立し、さらに硝子軟骨への分化に促進的に機能する成長因子の同定にも成功した。次年度は予定通りバイオ3Dプリンタを用いた実験へ移るため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は、上記の研究で確立した軟骨分化条件にて、バイオ3Dプリンタを用いた三次元犬軟骨組織の体外構築を進めている。組織学的評価によりspheroid同士の融合および軟骨基質発現を確認した後に、三次元犬軟骨組織の移植による有効性・安全性の評価を行う予定である。
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