2017 Fiscal Year Annual Research Report
バイオ3Dプリンタを用いた犬軟骨組織の体外構築と移植による軟骨再生治療効果の検討
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16J08547
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 健太郎 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | 軟骨再生 / 間葉系幹細胞 / バイオ3Dプリンタ / 低酸素 / 軟骨分化 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの研究により、新規の犬間葉系幹細胞である骨髄周囲脂肪細胞周囲細胞(BM-PACs)の効率的な軟骨分化条件の確立に成功したが、一部の細胞は線維軟骨へ分化していると考えられた。よって本年度は、Hypoxia inducible factor-1α(HIF-1α)を介して様々な細胞の増殖・分化制御に関与するとされる低酸素環境に着目した。まずは、BM-PACsの拡大培養および、その後の軟骨分化に対する低酸素環境(2% O2)の影響を評価した。低酸素下での拡大培養ではHIF-1αの核内移行が促進し、増殖能の亢進と骨関連遺伝子発現の有意な抑制が認められた。拡大培養時の酸素濃度に関わらず、低酸素で軟骨誘導を行ったspheroidではHIF-1αの核内移行が認められ、グリコサミノグリカンおよび硝子軟骨マーカーであるⅡ型コラーゲンの発現が亢進し、線維軟骨マーカーであるⅠ型コラーゲン発現は抑制された。軟骨関連遺伝子の発現は低酸素下で軟骨誘導を行ったspheroidにおいて有意に亢進した一方で、COL1の発現は有意に抑制された。以上より、軟骨誘導時の低酸素環境はHIF-1αの核内移行を介してBM-PACsの軟骨分化を促進させるだけではなく、硝子/線維軟骨への分化運命決定にも関与することが示唆された。続いて低酸素環境によりBM-PACsを硝子軟骨へと分化運命決定付けすることが可能であるかを検討したところ、培養初期の1週間のみ低酸素培養を行うことで、グリコサミノグリカンおよび硝子軟骨マーカーであるⅡ型コラーゲンの発現が亢進し、線維軟骨マーカーであるⅠ型コラーゲン発現が抑制された。遺伝子発現についても軟骨関連遺伝子の発現が有意に亢進した一方で、COL1の発現は有意に抑制された。以上より、軟骨誘導の初期に低酸素環境に曝すことで、BM-PACsを硝子軟骨へと分化運命決定付けすることに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまで分化制御が困難であった間葉系幹細胞の硝子/線維軟骨の分化運命決定に関与する因子を発見し、幹細胞を硝子軟骨へと運命決定付けることにも成功した。次年度は予定通り犬軟骨欠損モデルへの移植を実施するため、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は3D犬軟骨組織の移植を実施中である。移植に際し条件検討などが必要であったが、現在は移植条件も確立することが出来たため、今後はこのまま移植を進め、有効性・安全性の評価を行う予定である。
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Research Products
(3 results)