2016 Fiscal Year Annual Research Report
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16J08616
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
庄司 観 東京農工大学, 大学院工学研究院, 特別研究員(PD)
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Project Period (FY) |
2016-04-22 – 2019-03-31
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Keywords | マイクロ流体制御技術 / 人工脂質二分子膜 / ナノポア |
Outline of Annual Research Achievements |
本申請研究では、膜タンパク質を用いて細胞と機械を融合し、細胞を一分子レベルで刺激・センシング可能なデバイスの開発を最終的な目標としている。本コンセプトを実現するために、本年度は「膜タンパク質評価のための脂質二分子膜積層デバイスの開発」及び「分子レベルでの細胞刺激を目指したSolid-state nanoporeの開発」に取り組んだ。以下に詳細を述べる。 脂質二分子膜積層デバイスの開発では、5層流を形成可能なマイクロ流路を設計・開発することで脂質二分子膜の積層を試みた。特に本研究では、マイクロ流路内にガイド壁を設けることで、多層流を形成可能なデバイスを提案した。マイクロ流体シミュレーションを用いて流路のパラメータを決定し、フォトリソグラフィ技術を用いてマイクロ流路を作製した。実際に、水溶液と脂質溶液を流した結果、マイクロ空間内に脂質二分子膜を積層することに成功した。さらに、形成した脂質二分子膜に膜タンパク質を再構築し電気計測を行うことで脂質二分子膜の形成を確認した。 Solid-state nanoporeの開発では、厚さ10 nmのカーボン薄膜を形成したTEMグリッドにTEMの電子ビームを照射することで直径4.0 nmから8.5 nmのナノポアを形成することに成功した。さらに、電気計測によりナノポアを通過するイオン電流を計測することで作製したナノポアを評価した。その結果、人工脂質二分子膜を利用した生体ナノポアに比べ安定したポアを長時間安定して開けることに成功した。 以上のように、本年度は生体ナノポアとSolid-state nanoporeそれぞれに関して評価した。今後は、人工脂質二分子膜の寿命向上及び、人工的に再構築した膜タンパク質と細胞のインターフェイス開発を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
細胞と機械の融合に向けまず本年度は、細胞と機械のインターフェイスとなる膜タンパク質の評価デバイスの開発を行った。膜タンパク質の評価手法としては、膜タンパク質のポアを通過するイオン電流を測定するナノポア計測を適応しようと考えた。本プロジェクトで使用する膜タンパク質は、二つの細胞間に一本のナノポアを形成するため、二枚の脂質二分子膜を近接場で同時に形成する必要がある。しかしながら、従来の脂質二分子膜形成手法では、そのデバイスサイズが大きいため複数枚の脂質二分子膜を近接場で同時に形成することが困難であった。そこで本研究では、水溶液と脂質溶液の5層流を形成可能なマイクロ流路を開発し、脂質二分子膜の作製を試みた。まず、本手法が有用であることを確認するために、流体シミュレーションを用いて5相流の形成を確認した。その結果、ガイド壁がある場合のみ5相流が形成されることがわかった。また、実際にマイクロ流路を作製し水溶液と脂質溶液を流した結果、ガイド壁がある流路では脂質溶液と水溶液の5相流が確認できた。さらに、実際にマイクロ流路を作製し、脂質二分子膜を形成した。その結果、本マイクロ流路を用いることで、脂質二分子膜をマイクロ空間内に積層させることに成功した。さらに、作製した脂質二分子膜にポア形成膜タンパク質を再構築し電気計測を行うことで脂質二分子膜が形成されていることを確認した。その結果、膜タンパク質を通過するイオン電流を確認することができ、脂質二分子膜が形成されていることが確認できた。 さらに本研究では、膜タンパク質と同様の機能を持つ、Solid-state nanoporeに着目し、生体材料以外でのインターフェイス構築の可能性を検討した。カーボン薄膜付きTEMグリッドに電子ビームを照射し直径4.0-8.5 nmのナノポアを作製することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
膜タンパク質評価デバイスの今後の課題として、膜寿命向上、及び膜間距離の短縮が挙げられる。本デバイスでは、約数秒から数十秒程度しか脂質二分子膜を維持することが出来なかった。脂質二分子膜の寿命を向上させるためには、脂質二分子膜形成面の小型化及びマイクロ流路材料の検討が必要であると考えている。特にマイクロ流路の材料に関しては非常に重要である。本研究では、シリコーン系の樹脂材料を使用しているが、溶液を吸収するため長時間溶液の状態を維持することが難しい。そこで、材料をガラスに変えることで溶液の吸収を抑え、脂質二分子膜の寿命向上が可能であると考えている。流路の改良後、実際に使用する細胞間コミュニケーションタンパク質を再構築し、電気計測により細胞と機械のインターフェイス材料の評価を行う。 膜タンパク質評価後、脂質二重膜と生細胞を接触させた状態で培養可能なマイクロチップを開発し、細胞と人工脂質二分子膜の間に細胞間コミュニケーションタンパク質を再構築する。まず、本マイクロチップにナノインプリント技術により細胞の接着を阻害するMPCポリマをパターニングすることで細胞の位置を制御し細胞と人工脂質膜を接触させる。本実験では、ギャップジャンクションによる情報伝達を行う。上皮細胞のセルラインを用いて人工脂質二分子膜との接続実験を行う。マイクロチップ上に配線した電極を用いてギャップジャンクションの構築を確認後、上皮細胞に対しギャップジャンクションを介して薬剤刺激を行い、カルシウムインジケーターを用いて細胞内のカルシウム濃度変化をモニタリングすることで本デバイスによる細胞への情報伝達を確認する。
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Research Products
(6 results)